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ユーザー増とともに社員が増えていくと、「メンバーの後ろには奥さんやお子さん、ご両親がいる。この人たちを食わせていかないと」。おのずと気が引き締まった。

成長の過程では、たくさんの壁にぶつかった。16年、BASEは社員数50人を突破する。それまで鶴岡は社員と直接コミュニケーションを取れる距離感で意思決定をしていた。しかし、50人を超えるころから目が届かなくなり、「僕が知っている現場ではなくなったし、現場からもみんなが知っている僕ではなくなった」。

その結果、初期メンバーが数人、去っていった。そこからは情報伝達のルールを決めたり、現場に権限委譲したりして、試行錯誤で組織を少しずつつくっていったという。

壁を乗り越えるたびに経験値を積み重ねて成長してきた鶴岡だが、今年に入り、また新たな壁が立ちはだかった。本人曰く「何もすることがなく、暇になった」。

することがなくなったのは、権限委譲が進んで、現場レベルの課題は現場で解決できるようになったからだ。普通なら経営者として喜ぶべき状況である。しかし、悩みはかえって深くなった。

「以前は課題が見えていたから、それを解決すればよかったんです。でも、BASEは次のフェーズに入った。ミッションに近づくために世の中にもっと大きなインパクトを与えないといけない。いま僕たちは“長い未来”をつくろうとしていますが、答え合わせは数年先になる。悩みの質が、以前とは全く違うものに変わってしまいました」



鶴岡がつくろうとしている未来とは何か。ビットバレーの時代に起業した堀江貴文や藤田がインターネット産業の第一世代、家入や山田を第二世代とするなら、彼らの背を見て起業した鶴岡は第三世代にあたる。

「今は僕の母親でも使えるくらいに隅々までインターネットが普及した。だからこそ、さらにテクノロジーを活用して、価値交換をシンプルにして、世界中の人々が最適な経済活動を行える環境をつくっていきたい」

BASEは18年1月、オンライン決済サービス「PAY.JP」とID型決済サービス「PAY ID」の決済事業を分社化。同時に、誰もが金融のメリットを享受できる世界を目指して、BASE BANKを設立した。鶴岡が描く未来を実現するための体制は整いつつある。家入も鶴岡の成長に目を細める。

「ゆったりとして動じないところは昔と変わらないけど、最近、自信がついたよね。いまでは僕の方が鶴ちゃんに相談することが多いくらい」(家入)

師匠の褒め言葉を照れながらニヤニヤ聞いていた鶴岡だが、オフィスに戻った後は真顔でこう話していた。

「家入さんや進太郎さんとの差は、むしろ広がったんじゃないですかね。家入さんは新しいことを次々に始めているし、同じ時期に同じ場所で起業した進太郎さんは、メルカリですごいインパクトを社会に与えた。先輩たちに追いついた感覚なんてない。まだこれからです」

百戦錬磨の第一第二世代に囲まれて育ったせいか、鶴岡の目線は高い。そこが先輩たちに愛され、期待される理由でもあるのだろう。


鶴岡裕太◎1989年、大分県生まれ。大学在学中から複数のインターネットサービスのバックエンドのプログラミングやディレクションを経験し、2012年、22歳の若さでBASEを設立。17年、弊誌起業家ランキングで9位に選ばれる。

文=村上 敬 写真=アーウィン・ウォン

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