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2018.12.06

口だけでなく金も出す、孫正義の「上場を遅らせる」という戦略

孫 正義(Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images)


孫の率いるソフトバンクは、ビジョンファンドというファンドを、サウジアラビア王国と9兆2千億円で立ち上げ、さらに拡大させている。

サウジアラビア人記者殺害事件で、同国皇太子が関与しているのではという疑義はアメリカでも大きく報道されてきたが、先の中間選挙でそのニュースも潮が引いた。サウジはサウジ、ソフトバンクはソフトバンクという割り切りへと落ち着き、なんとか危機も乗り越えたようだ。

孫の投資先は、このほかに「ウーバー」や住宅メーカーの「Katerra」(900億円の投資)など多岐にわたる。住宅メーカーなど、一見IT企業とは関係のないように思えるが、建設資材と建築の全工程をITで一括管理するという点が、孫の目を引いた。

孫は、全米の大金持ちや成長企業のCEOだけが内密に招待される「サンバレー・コンファレンス」という異業種交流会(「大富豪の夏合宿」というニックネームがある)に招待されている数少ない日本人の1人だ。

今後も、有望な投資話はどんどん孫に集まるはずで、孫のメンターシップとしての実力が問われていく。おりしも、ソフトバンクは再び後継者選びを模索しており、その意味でも、孫がリーダーシップからメンターシップへと舵を切っていることが裏付けされる。

シリコンバレーのテクノロジーアナリストであるレット・ウォレス氏によれば、「ソフトバンクの投資戦略は、投資先に無理に上場させない」という点がユニークなのだと指摘する。「Think Bigger」(もっと大きく考えよ)がメンターとしての孫の口癖だということだが、Masa-POが、さらに普遍的なシリコンバレー用語になる日も近い。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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