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2018.11.27

「衛星のタクシー」になる小型ロケット開発で世界100社が激戦

「Rocket Lab」のロケット(photo courtesy of Rocket Lab/Photo credit Kieran Fanning and Simon Moffatt)


小型ロケット市場には、投資家から多額の資金が流入している。Rocket Labは最近、シリーズEラウンドで1億4000万ドルを調達し、調達総額は2億8800万ドルに達した。同社の評価額は10億ドルを超える。また、10月には同業の「Vector」がシリーズBラウンドで7000万ドルを調達した。

Vectorは、元スペースXのエンジニアたちによって設立された。この分野では競合も多い。リチャード・ブランソンのヴァージン・ギャラクティックからスピンオフした「ヴァージン・オービット(Virgin Orbit)」も、最近テストを完了し、数カ月以内に初の衛星打ち上げを行う予定だ。

同社は、ロケットをジャンボ機に搭載して大気圏まで運び、空中で射出する。この手法のメリットは、射出のタイミングと場所を選ぶことができることだ。故ポール・アレンが創業した「Stratolaunch」も同じ手法を採用しており、エンジンテストを最近完了したばかりだ。

中国、英国、オーストラリア企業も

この新しい宇宙競争に参入しているのは、米国企業だけではない。英国の「Orbex」は約4000万ドルを調達し、スコットランド企業「Highlands and Islands Enterprise」がスコットランドに建設した宇宙船基地からロケットを発射する計画だ。また、オーストラリアに本拠を置く「Gilmour Space Launch」は、1300万ドル以上を調達し、2019年に試験機の発射を行う予定だ。中国でも、「iSpace」と「OneSpace」の2社が今年初めに準軌道テスト飛行を成功させている。

小型ロケットの課題は、打ち上げコストにある。経済的に成り立たせるためには、燃料を含めたロケット全体の重量に占める衛星の重量の割合が一定水準以上ある必要がある。

「ロケットを小型化すると、本体が大きな割合を占めることになる。このため、衛星の重量の割合を従来のロケットと同じ水準に保つことは困難で、経済性は損なわれることになる」とミシガン大学教授(航空宇宙工学)でIEEE(米国電気電子学会)幹部のElla Atkins博士は指摘する。

こうした事情に加え、参入企業が多いことから、SpaceflightのBlakeは数年後には多くの企業が撤退している可能性を指摘する。「全ての企業が生き残ることはないだろう」とBlakeは話す。

一方、ForecastのOstroveによると、小型ロケットに対する需要は確実に存在しており、勝ち残った企業は顧客に困らないという。「市場は過熱気味だが、小型ロケットに対するニーズは間違いなくある。小型衛星は次々と売れており、それらを軌道に運ぶためのロケットが必要だ」とOstroveは話す。

編集=上田裕資

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