「金融に興味のある子」に育てる環境のつくり方

Viktoriia Hnatiuk / shutterstock

金融教育というと資産運用が最初に連想されることが多く、「子どもに株式投資をさせるのはいつから、どのように始めるのがいいのか?」という質問をよく受ける。実はその答えは、この連載で繰り返し伝えてきた通り「家庭」の中にある。今回は、筆者が大学生で投資を始めるまでの家庭環境を振り返りながら、金融に興味を持つ「きっかけ」について考えてみたい。

ひょんな事がきっかけになる

筆者が子どもの頃、父親はシンクタンクでエコノミストをしており、なかなか家に帰ってくることはなかった。週末も仕事をしていた。週末に父親と出かける友人を羨ましがる我が子に申し訳ないと感じたのか、ある日、父は会社からお絵かき用に裏紙を持って帰ってくるようになった。

小児喘息で運動に向かなかった筆者は、よくその裏紙に絵を描いて遊んでいた。しかし、当時は「男子は野球やサッカーをするもの」というのが子ども同士の共通認識。「男のくせに運動もせずに絵を描いて気持ち悪い」と言われるのが嫌で、絵を描くのをやめてしまった。

ところが、今のようにインターネットもスマホもない時代、絵をやめると手持ち無沙汰になった。そこで、裏紙をひっくり返してレポートを読んでみた。当然難しすぎて意味が分からず、父親にアドバイスを求めた。だが、分厚いマクロ経済学とミクロ経済学の教科書を手渡されただけだった。

あまり参考にならないかもしれないが、これが筆者にとってのきっかけだった。

一度流れに乗ったら過剰に介入しない

それから数年、独学で経済を学び、大学は経済学部に進んだ。そのため大学の授業は、既に学んだことの復習のようで、少し物足りなさを感じていたころ、父親がデイトレーダーのインタビューをまとめた書籍を持って帰ってきた。読んでみると非常に面白く、父に株式投資の方法を尋ねたところ、手数料が安いオンライン証券を教えてくれた。

証券口座を開いても、父は何もアドバイスはくれなかった。そのためインターネットで色々な情報を読んだり、書籍を買ったり、独学で勉強しながら投資経験を積んでいった。

当時は何も教えてくれない父親に不満を感じることもあったが、いま思えば、あの時わからないなりに手探りで試行錯誤を繰り返したことが活きていると実感するシーンは多い。

では、親になった今、筆者は自分の子どもと「金融」の接点をどう作っているのか。ポイントは「強制しない」と「日常の中での工夫」の2つだ。
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文=森永康平

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