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2018.11.28

リーグ分立の混乱から一転、なぜB.LEAGUEは売り上げ10倍を達成できたのか?

Bリーグ事務局長 葦原一正


──最近ソーシャルメディアでもBリーグの盛り上がりは体感しており、葦原さんのツイートを見ていても空気の作り方が非常に上手いように感じます。その辺りは何か意識されていますか?

葦原:おっしゃる通り、空気を作るのが大事だと思います。個人的にはどこかで弾けると思っているんですよね。その時が来るまでは我慢しようとみんなで言っています。横浜DeNAベイスターズの時と感覚は似ていますが、当時の方が最初だからかもしれませんが苦労しました。一般の方にとっては、今はまだ所詮Bリーグだろうと思われている方も多いでしょうが、そのうち見とけよ、と思っています。

リピーター化は確実に進んでいて総入場者数は増えていますが、ユニークユーザーの数は実を言うと、そこまで増えていません。つまり新規のお客様の数はそこまで増えていないということです。バスケファンにとっての熱量は高まっているので、SNSをやっていると、盛り上がっていると勘違いしてしまうのですが、そこら辺の歩いている人に聞くとそうでもない。その感覚のズレは怖いですね。

やはりリピーターばかりになってしまうと“常連さんしか来ない寿司屋”になってしまいます。新規ユーザーにとって、のれんを潜りにくくはしたくないですよね。

リピーターは経営において基盤なので、もちろん重要です。しかし、リピーターを増やすのは語弊を恐れずに言うと、簡単。ゼロからイチにする方が、コストも6〜7倍掛かるので新規ユーザーの獲得は一番難しいです。

──新規ユーザーを獲得するためには何が効果的ですか?

葦原:2つあると思います。そのうちの1つ目は誘い、誘われだと思っています。新しく来る人はよくよく聞いてみると誘われてきている。

口コミマーケティングと昔は言われていましたけど、そうではなくて「チケットを買っといたから行くぞ」というぐらいでないと結局、人は最後動かないんですよね。いかにインフルエンサーやコアファンがどれだけ新規ファンを連れてきてくれるかが大事です。

世の中の消費財も同じだと思いますけど、好きと実際に購入するは違いますよね。私もマクドナルドのポテト好きですが、子供が行きたいと言わない限りは行かないですからね(笑)。

 

2つ目は空中戦的にやるのであれば、Bリーグだけの盛り上がりではなく、オリンピックや代表戦と上手く戦略的にやっていった方が良いかな、といまは思っています。つまりオールバスケットで、日本代表が盛り上がれば、代表選手がいるBリーグを見に行こうと思って頂く流れを作りたいですね。

──各アリーナも個室居酒屋など面白い取り組みをやっていますね。葦原さん自身、クラブから影響を受けることはありますか?

葦原:シーホース三河の取り組みですよね。あれは野球時代に実は検討しているんですけど、断念したんです。やっぱり席を結構、潰すので難しいですよね。シーホースは簡易型でやっていて、非常に面白いやり方だなと思います。

茨城ロボッツはオールスターで署名活動を始めましたね。(2019年オールスター開催地は北海道と茨城の二箇所に絞られている)本当に上手いなと思いました。魅力度ランキング1位と最下位の対決となったわけですが、行政とSNSの力で面白いことになりそうな気がしています。

クラブから影響を受けることはもちろんあります。最近すごいと思うのは、琉球ゴールデンキングスが1万人アリーナをつくってしまうことです。そして川崎ですかね。去年も入場者数を増やしていますけど、今年DeNA体制になってからやっている内容も興味深いですし、グッズの売り上げも増えています。現場の空気が変わったと思います。
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文=新川 諒 写真=帆足宗洋

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