抗うつ剤を手掛ける企業にとって今のところ、状況は“かなり良い”といえそうだ。疫学と地域保健に関する英専門誌、Journal of Epidemiology and Community Healthに先ごろ掲載された研究結果からみれば、そう考えることができる。
ブレグジットの是非を問う国民投票の結果によって、英国が不確実性の高い時代に突入したということは、否定し難い。ブレグジットは英国経済を低迷させる可能性があると警告するエコノミストもいれば、英国はより良い条件でEUと交渉できるようになると主張する人もいる。また、投票後には、明らかに人種や民族、宗教に関連した不寛容の高まりや、差別の増加を示す例が報じられている。
高まる抗うつ剤の「相対的処方率」
ロンドン大学キングスカレッジと米ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者からなるチームは、国民投票の実施前後における抗うつ薬の処方率について調査を実施した。
イングランドの326の選挙区にある一般開業医から2011~16年の薬剤の処方に関するデータを収集し、痛風や糖尿病、コレステロールの問題、鉄分欠乏症など、メンタルヘルスとあまり関連のないその他の薬剤の処方率の変化と比較した。
その結果、調査対象とした全ての薬剤の処方率は、国民投票の実施まで毎年上昇していたことが分かった。一方、投票後にはそれ以前より低いペースであるものの、国民1人当たりの抗うつ剤の使用のみが増え続けていた。
抗うつ剤の処方率はその他の薬剤と比べ、13.4%上昇していた。つまり、英国がEUからの離脱を決めた後、使用されている薬剤における抗うつ薬の割合が、相対的に増えたということになる。