ビジネス

2018.11.29

証券業界が「本気で」SDGsに取り組む理由

国際連合広報センター所長の根本かおる、日本証券業協会会長の鈴木茂晴


根本
:女性の活躍を推進することは、社会的に価値があるだけでなくビジネスとしても価値があるということですね。多様性を尊ぶ企業は様々なビジネスチャンスを見つけやすいのと同時にリスク管理にもつながり、利益率が高いというデータもあります。女性がイキイキ働いていると、女性投資家のニーズを汲み取れるかもしれませんね。

鈴木:まさにその通りです。どの業界でも、ガツガツ働く人から大器晩成型まで、いろんなタイプの社員がいますよね。様々なタイプがいるのは男性も女性も同じなのに、なぜか「女性は成長が遅い」などとひとくくりに語られてしまう。彼女たちの個性を認めて、働きやすい環境をつくらなければいけません。

まずは女性社員がどのような悩みを抱えているのか、トップ層にきちんと声を伝えることが大事だと思っています。証券業界は本気度が違うということを、見せつけたいですね。

社会課題の解決につながる金融商品の充実を

根本:鈴木会長は、女性活躍の推進に加えて「社会的弱者への教育支援」として子供の貧困対策にも取り組んでいらっしゃいますね。本業を通した社会課題の解決や、働き方改革に力を入れるのはわかりやすいのですが、なぜ子供の貧困をテーマにされたのでしょうか。
 
鈴木:証券業界の長期的な存続を考えると、金融の大切さを理解してもらう必要があります。そのためには、子供が教育を受ける機会の平等性は欠かすことができません。義務教育や高等教育については、国でもいろいろ手を打っていますが、義務教育前の段階、また教育を受けるための大前提である生活環境の整備もサポートすべきだと考えたんです。

いまはそのような支援に取り組む団体等へ寄付を行う「こどものみらい古本募金」に業界全体で取り組むこととし、会員証券会社の店舗に古本回収ボックス設置を働きかけています。証券会社の店舗網は全国に及び、これまでに1200以上の拠点に設置しました。一つひとつは小さくても大きな助けになるはず。NPOともタイアップして、今後はさらに活動を進めるつもりです。

子供は、未来の日本を支えてくれる存在です。彼らの才能を若いうちに摘んでしまうのは、証券業界だけでなく国にとって大きな損失。機会均等のために、できることをやりたいですね。



根本:最後に、今後の抱負を聞かせていただけますか。
 
鈴木:まずは社会課題の解決につながるような金融商品を充実させることですね。現状ではこうした金融商品でも、明確な定義が定まっていないという実情もあります。また、こういった商品の購入者に対し税制面での優遇が少しあるだけでも、インパクトはあるはずなので、政府にも要望を提出しています。こういったファンディングを通じて社会貢献ができる国、業界でありたいと思っています。

日本には資金を持っており、かつ社会貢献したい人がたくさんいます。社会貢献につながる投資は日本人のマインドにぴったりなので、私たちが率先して世界に貢献できる枠組みをつくりたいですね。

文=野口直希

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