米年末商戦始まる、小売業界は組織犯罪の増加を懸念

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米国では今年、感謝祭(11月22日)から週明けのサイバーマンデーまでの間におよそ1億6400万人が買い物をするとみられ、ホリデーシーズンの売上高は最高額を記録すると予想されている。

全米小売業協会(NRA)は、11~12月の休暇期間中の売上高は、最大で前年比4.8%増となり、約7210億ドル(約81兆5120億円)に達するとの見方を示している。ただ、小売業者が記録更新を見込んでいるのはそれだけではない。

小売業が被害に遭う組織的犯罪(ORC:organized retail crime)の被害額は今年、昨年に引き続き過去最多を更新し、各社の売上高10億ドル当たり平均77万7877ドルに上ると予測されている。これは、前年比7%増に当たる金額だ。

調査に協力した小売業者のうち約92%は、過去12カ月間にORCの被害に遭ったと報告。また、71%は「被害は増加している」と答えている。調査対象は大規模小売店から食料雑貨店、専門店、百貨店までの66の小売業者。大半は年間売上高が10億ドルを超えている。

広がるORCの被害

NRFはORCを「商品の再販による金銭的な利益獲得を目的とした、小売業者からの大規模な窃盗」と定義している。厳しい予算や人材不足に直面するなか、ORC被害の増加は、小売業者にとって懸念すべき問題だ。

米国内には、窃盗を軽犯罪ではなく、重罪に分類するようになっている州もあるというが、法律による犯罪抑止効果は薄れているとされる。

盗難の被害に遭った商品のおよそ60%は、フリーマーケットや質屋などの「実店舗」から回収されている。ただ、盗んだ物やギフトカードをオンラインで売ることは一層容易になっている。NRFは、「ORCの犯行グループの手口は、ますます大胆になっている」と指摘する。

小売業者が被害に遭うのは店舗だけではない。調査によれば、コールセンターが詐欺に遭うケースも増加している。また、「貨物盗難」の被害も報告されている。前年の40%からは減少したものの、30%近い小売業者が被害に遭っており、依然として大きな問題だ。

ORCの標的となるのは、デザイナーブランドの衣類やハンドバッグ、iPhone、高級スピリッツなどの高額商品だけではない。調査結果によれば、被害に遭うことが多い品目の上位には、洗濯用洗剤やカミソリ、乳児用粉ミルク、歯のホワイトニング用のテープ、デオドラントなどが入っている。

盗難被害に遭った商品の一部は、小売店によって回収されている。だが、こうした形で「返品」されるもの以外にも、今年のホリデーシーズンにはより多くの商品の返品が問題になるとみられている。

小売各社が予想するこの期間中の返品率は、平均11.1%。このうち10.3%が、「返品詐欺」に当たるものになると推測される(この割合は、年間では平均8%超)。
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編集=木内涼子

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