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「海外でも日本酒が造られるようになれば、日本の蔵元にとってプラスになる」

海外で高まる日本酒のプレゼンス

一方、日本酒の新たな可能性が広がりつつあるのは海外だ。海外では輸送費や関税などによって、日本国内での小売価格の3〜5倍ほどの高価格で取引されている日本酒だが、その人気は年々高まっている。

海外での和食人気に後押しされる形で、海外市場はここ数年伸長し続けており、2001年時点で約32億円に過ぎなかった日本酒の輸出額が、2017年には約187億円と8年連続で過去最高記録を更新し続けている。

世界最大規模のワインコンペティションであるイギリス「International Wine Challenge」には2007年以降「SAKE部門」が新設され、2018年は過去最多となる456蔵から1639銘柄が出品。2018年4月にはフランス・パリに「獺祭」を醸す旭酒造がジョエル・ロブションとのコラボレーションで複合型レストラン「Dassaï Joël Robuchon」をオープンした。

フレンチやイタリアンでワインとのペアリングを楽しむように、海外では和食のみならずフレンチや中華、ガストロノミーなどさまざまな料理とも組み合わせ自在な日本酒のスムーズな味わいが注目されているのだ。

そしてここ数年で海外を拠点に日本酒を醸す蔵も増えてきた。アメリカをはじめカナダ、メキシコ、オーストラリア、ブラジルなど全世界に40を超える現地醸造の蔵元があると言われている。

今年10月にはイギリス・ケンブリッジに大阪の堂島麦酒醸造所を母体とする「堂島酒醸造所(Dojima Sake Brewery)」がオープンし、1本1000ポンド(日本円で15万円弱)のプレミアム日本酒を醸造。2019年には旭酒造がアメリカ・ニューヨークに7千石規模の現地醸造所を開設することを明らかにしている。

いわば海外でも「地酒」が楽しめるようになることは、日本の蔵元にもプラスになると生駒氏は断言する。

「日本で地酒を楽しむ感覚で、海外でもしぼりたての新酒やひやおろし、無濾過生原酒などさまざまな味わいの日本酒をリーズナブルに飲めるようになれば、それまで日本酒を味わったことのなかった層にも楽しんでもらえるようになるでしょう。

そしてその裾野が広がっていくことでプレミアム日本酒にも注目が集まり、ワインにおけるボルドーやブルゴーニュのように、『日本で造られた日本酒はさすがに美味しいね』と、世界中の誰もが認めるものとなるはず。そこで圧倒的な日本酒のポテンシャルが花開くわけです」

ハイエンドなヴィンテージワインやウィスキーがある種のステータスを表現するように、日本酒にもパラダイムシフトが起こり、プレミアム市場が発展する──。そこにあるのは揺らぎない日本酒の可能性への確信だ。生駒氏は語る。

「今年も輸出額は過去最高を上回るペースですが、たかだか187億円。1兆円を超えるフランスワインの輸出額に比べれば、まだまだこれから。人々の価値観や嗜好が多様化していくなかで、まさに新しい時代をつくる可能性を秘めています。

最上級の体験は誰もが望むものだと思いますが、僕たちは日本酒において人生を変えるようなスペシャルな体験を提供したい。僕自身、価値観がひっくり返るような日本酒と出会って、思いあまって起業までしたわけです。

それによって人生が豊かになったという実感がある。それをぜひ世界中の人にも体験してほしいし、日本酒を語れる人を増やしていくことで、日本酒市場を広げていきたいですね」

文=大矢幸世 写真=山田大輔

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