高野は「グッドパッチ」の広報として、徐福は今年6月に独立起業した会社の代表として、仕事を続けている。女性が家事をこなしながら仕事をしたり、夫婦のどちらかだけが犠牲を払ったりする、従来の共働き夫婦の固定観念を覆したかった、という。
そんなふたりにとっての「いい夫婦」とはどのようなものだろうか。ふたりの会話からは、いまの時代ならではの新しい夫婦の在り方が浮き彫りになった。
付き合い初めに「価値観の擦り合わせをした」
──まずは、おふたりの出会いのきっかけから教えて下さい。
高野:もともと、彼は会社の同僚でした。私が広報で、彼はUXデザイナー。初めはあまり接点がなかったけれど、あるプロジェクトを彼が担当していて、私がPRを担当することになったんです。それをきっかけに話すようになったのが、はじまりでした。
徐福:最初にふたりで出かけたのは、仕事の合間のランチだったよね。
高野 そうそう。
徐福:そのあと、同僚も含めて複数人で出かけたり、ふたりで映画を観に行ったりするようになって。5カ月くらいしてから付き合い始めました。
──付き合い始めてからどれくらいで結婚したんですか?
高野:付き合い始めが2016年5月で、そのちょうど1年後の2017年5月にプロポーズされました。
──結婚は、仕事にどんな影響を与えましたか?
高野:メンターができた、という感じがしています。彼に仕事のアドバイスを求めるわけではないけれども、自分の思ったことや、その日の出来事を彼に話すとすっきりする。話すこと自体に意味があるんでしょうね。頭のなかにあるものが言語化されて、整理されるんです。
徐福:チームの仲間のような感覚です。付き合い始めてすぐに、どういう関係でいたいかを話し合ったんです。そのときに、「それぞれ個として成立しているけど、ふたりでいることによって、より、個がプラスになっていくような間柄でいたいね」という意見で一致した。
──付き合い始めのときからそんなお話をしていたんですね!
高野:価値観のすり合わせのようなことをしましたね。
徐福:例えば、人のせいにしたりしない。「おまえのせいで」みたいな他責思考の言葉を口にしない夫婦でありたいと思っています。お互いに主体性を持っていきたいですね。
高野:最初に呼び方をちゃんと決めたのもよかったよね。
徐福:そうだね。長期視点で考えて「葉子(ようこ)ちゃん」と「健安(たけやす)くん」と呼び合うことにしたんです。ちょっと険悪な雰囲気になっても「葉子ちゃんさぁ」と呼びかけたら、空気がやわらかくなりますよね。
高野:年を重ねてもお互いへのリスペクトを残すために、呼び捨てではない方がいいと思っていたんです。いつでも、誰の前でもオープンでフラットであるために、お互いの両親の前であっても変えません。
徐福:お互いへのリスペクトを持ち続けたいというのと、個として自律した関係性であり続けたい、という価値観を共有できているのは、ふたりが働いていた会社の、オープンマインドを大切にするカルチャーのおかげかもしれない。
価値観のすり合わせをしたのも自然な流れだったけれど、それって会社のなかでそういう習慣が身についていたからなんです。
高野:そうですね。「グッドパッチ」は、デザインの会社。例えば、なにかを始める時に「なぜそれをするのか」という本質を考えますし、お互いの価値観を尊重します。
元々の自分の考え方に合っていたから選んだ会社ではあるけど、働くうちにそういった共通の価値観が醸成されて、ライフスタイルに溶け込んでいったんだと思います。