「平等と可能性の対話を広げたい」。伝統的な性別のイメージにとらわれない子供服ブランドに、そんな思いを込めた。
セリーヌ・ディオンがブランドで叶えたい思い
ブランドを立ち上げるにあたって、彼女のメッセージを的確に表現した動画広告を作成している。
舞台は病院。生まれてまもない赤ちゃんたちがベッドに横たわっている。彼らは性別に合わせて水色とピンクの服を着ている。ベッドも性別で分けられて整列している。
そこにまるでスパイのように入り込むディオン。彼女は十字のデザインが入ったカバンを持っていた。
カバンから取り出した魔法の粉を赤ちゃんに吹きかけると、たちまち水色とピンクの服ではなく、新ブランドの服に切り替わる。白黒のデザインは、赤ちゃんたちを性別で分け隔てることはない。
赤ちゃんが生まれると、男の子には水色、女の子にはピンク色の服を着せがちだ。おもちゃも色別に分けられる時がある。
しかし、そのような性別分担は、ときに「押し付け」になる可能性もある。ディオンはもっと子供たちが自分たちの性に対して自由になってほしいという思いから、性別にこだわらない黒白の配色を扱ったブランドを立ち上げたのだろう。
性別の枠を越える動き
このような「ジェンダーニュートラル」、「ジェンダーフリー」の動きは、ファッション業界で近年よくみられるようになった。
毎年世界各国のデザイナーが新作ファッションを発表するニューヨーク・ファッション・ウイークでは、2018年2月より男女のいずれにも属さない、「ノンバイナリー」のカテゴリーを加えた。
世界初のジェンダーフリー店舗として知られるアメリカの「ヒュルイド・プロジェクト」は、メンズ、レディースのカテゴリーではなくTシャツ、パンツ、パーカーなどのようにスタイル別で服を分けている。
店舗だけでなく、ジェンダーレスなファッションサイトも立ち上がっている。エイプリル・メラスとエイミー・ベンダーというふたりのクリエイターによって始まった「RIGit」は、「Clothes have no gender(服にジェンダーの縛りはない)」をコンセプトにオンラインで服を提供している。ここでも、メンズ、レディースの区別をしていない。
ますます性別にとらわれない生き方が推奨される時代の中で、ディオンのブランドは親にも訴えかけているのだろう。最初から押し付けられた役割ではなく、生まれてくる子どもたちには自分で選ぶ自由があるよ、と。