「プロポーズはプレゼンでした」 女性起業家のパートナーとは

井上皓史と中村朝紗子




妻がバリバリ働き、夫がサポートする


──まさに朝活で出会ったわけですね。なぜ井上さんは「朝渋」を立ち上げたのでしょうか?
 
銀行員の父に合わせて、子どもの頃から毎日22時に寝て5時に起きていたんです。親が厳しかったとかではなく、この時間に寝るのが当たり前で、大学でも飲み会の二次会に行くことはほとんどありませんでした。
 
ですが、新卒で入った会社は、10時出社で夜遅くまで働くのが当たり前だったんです。僕は18時にはもう元気が出なくなってしまって……。そこで上司に思い切って朝型生活のことをカミングアウトしたんです。
 
──カミングアウトしたんですか(笑)。
 
井上:すると、「わかった。じゃあ朝出社で働いてみろ」と言ってもらえて。特例ルールで出社したらどんどん成果が出るようになったんです。
 
次に転職したベンチャー企業でも僕だけ早朝出社をしました。すると社長も早起きに興味をもってくれて、みんなで早起きして生産性を高めようということで、出社時間が9時になったんです。
 
──会社の定時まで変えてしまったんですね。
 
井上:その時、早起きのコツを教えれば喜んでくれる人がたくさんいるんだと実感しました。このことを当時知り合ったばかりの西村に話したら、「僕も早起きしたいからコンサルしてよ」と言われて。彼は個人事業主になったばかりで、生活リズムがガタガタだったんです。
 
しばらく彼の生活リズムをサポートしていたら、1〜2カ月で早起き習慣が身についたんです。西村は「人生で初めて早起きができたよ!」と感動してくれて、2人で朝渋を立ち上げました。以降は、平日はほかの会社で働きながら、朝と休日は「朝渋」に注力していました。
 
──それで、女性により朝渋を知ってもらうために、中村さんに声をかけたんですね。井上さんの第一印象はいかがでしたか?
 
中村:正直に言えば、西村さんの方が印象に残っていますね。彼は私の周りでは有名人でしたから。井上は、西村さんを影から支えているイメージ。
 
井上:「西村さんに会いにきた」と言っていたよね。
 
──そんな状態で、どうお二人は仲を深めることになったのでしょう?
 
中村:私が「朝渋」の運営に参加することになったので、決起会をやることになりました。しかし、家庭のある西村さんは、夜は自宅で過ごすと決めていた。それで井上と何度か会って話すうちに、仲良くなった。
 
井上はすごくフラットで、穏やかなんです。仕事の悩みも聞いてくれるし、デートプランを聞いたら「カフェでモーニングしよう!」というし。
 
それまでは仕事でつながっている人たちと飲むことが多かったので、それまで忘れていた安らぎを思い出せたんです。
 
井上:僕は、あまり自分に自信がなかったんです。「朝渋」も西村が先頭でグイグイ引っ張って、僕は裏方としてイベント運営やエクセル管理などをやっていました。
 
ですが、彼女は僕のことをとても褒めてくれて、背中を押してくれた。「あなたが自信もって語らなければ、『朝渋』は存在する意味がない。素晴らしい活動なのだから自信を持って」って。
 
また、彼女は表ではとてもハキハキしているのに、裏では色々な悩みを抱えていることもわかりました。彼女をもっと支えたいと思って付き合いました。
 
中村:出会って2カ月でつきあって、すぐに同棲を始めました。
 
──中村さんが社長として前線でバリバリ働き、井上さんが横で支える。
 
中村:一般にイメージされる夫婦とは、正反対ですね。私は社長業に集中させてもらっています。家事はほとんど井上に任せていますが……。
 
井上:料理も洗濯も好きですから。掃除も基本的には僕がやっていますね。
 
中村:私は重い荷物運びと、水回りの掃除を担当してます(笑)。
 
井上:中村は、平日は社長として仕事に生きているので。仕事とプライベートのバランスは、他の夫婦とは違うかもしれませんが、毎日本当に楽しいですよ。
 
僕も自分に合った生活リズムで働けるので、最大限パフォーマンスを発揮できます。7時に出社して、16時に帰宅してから、溜まった家事を片付けるなんて、他の企業ではなかなかできないですからね。
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文=野口直希 写真=藤井さおり

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