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2018.11.25

シリコンバレー事情を「深聞き」 テスラ工場見学と狂気の沙汰

Nadezda Murmakova / Shutterstock.com


マスクのツイート騒動「後悔していることは?」

奥本:カーラはツイッターを頻繁に利用することで有名なんだけど、彼女がイーロンのツイートについて色々と質問しまくってた。

渡辺:公開企業のCEOとしてあるまじきツイートをしたものね。

奥本:8月の「テスラの株を420ドルで買い取って非公開化する」というのね。虚偽情報で株の価格操作をした疑いでSECの調査が入った。

渡辺:結局、罰金と取締役会長を新しい人に変えるだけで済んでしまって、かなり軽い罰だった気がするんだけど、イーロン本人はカーラに「今年一番後悔してることは?」 と聞かれて「やっぱりツイートかな」と言っていたね。

奥本10月16日に和解をしたから意外に早かった。罰金を2000万ドル払って、取締役会長も女性のベテラン・エグゼクティブが就任することが発表されて、イーロンもようやく公にインタビューできるようになったということなのでしょう。

渡辺:イーロンが「弟に、自分で自分の足を刺したあとで、その足を捻ってさらに悪化させるのはやめろ、と言われた」とも。

奥本:イーロンは「あまり寝てなかったし、ものすごいプレッシャーのなかで仕事してたから、そういう心理状況の中でミステイクはするよ」と言っていたけどね。

渡辺:当時は毎週120時間ぐらい働いていて、数時間仮眠を取るだけでずっと会社に泊まり込んで働いていたとのこと。あの一件の後、日本のアニメのこととか「Elon-chan!(イーロンちゃんだよ!)」とかツイートしててさすがにメンタルを心配したんだけど、今は80時間労働ぐらいになって「80時間だったらサステイナブル」と。さすが超人。

奥本:イーロンの半生記を読んで、自分がこれだと思ったことを絶対にやり遂げるものすごいタフな人物だという風に思っていたのね。その彼が「あまりのプレッシャーと寝不足のために奇行をしてしまった」と自分で認めるぐらい大変な年だったということだよね。

テスラの自動運転技術はどこまで進んでいる?

奥本:自動運転技術に関しては「競合はいない」と言い切っていた。

渡辺:自動運転はソフトウェア技術、それは元来ハードウェア企業の車会社には難しい、しいていえばグーグルのウェイモが一番の競合と言っていたけれど、それはとても正しいと思う。 テスラのソフトウェアは、2〜3週間に1回ぐらい無線でアップデートされるんだけど、 一番新しいバージョン9.0はすごく斬新。特に自動運転はかなり画期的だわ。

奥本:少しだけ試してみたのだけど、左の車線に寄りすぎてる感じが怖くて使っていない。千賀さんが以前「免許取得したてのティーンエイジャーみたいな運転」と言っていたけれど、それよりはずいぶん良くなった?

渡辺:テスラに乗り始めて1年半くらいだけど、アップデートごとにどんどん良くなっている。今回は、特に車線変更が劇的に向上した。「ウインカーを出すと、車のコンピュータが判断して自動的に車線変更する」という仕組みは前から一緒なんだけど、これまでは、ウィンカーを出しても同じスピードで走り続けて、5秒ぐらいの間に車線変更できるタイミングが来なければキャンセルという感じだった。

それが新しいバージョンでは、「スピードを落として隣の車線の車の後ろに入る」とか、「車線変更をし始めたところで後ろの車が速すぎると判断、いったん戻り、後ろの車がスピードを落としてくれたら改めて入る」といった本当に人間のような動きができるようになった。あと、カーナビに行き先を入れておくと、車線変更すべきタイミングで変更指示が出て、それを承諾するためにウィンカーを出すと車線変更される、というのもできるようになった。

ポッドキャストでもイーロンが「来年には完全な自動運転にする」と言っていて、彼はいつも話が大きいので半分くらいに受け取るにしても、かなり近づいてきた感はある。ただし高速道路だけだけどね。

奥本:法規制に関しては、今のところ無人の自動運転を許可している州は限られるのだけれど、今後は国レベルで決めて行くべきだともイーロンは言っていた。この先自動運転の走行距離がどんどん増えて、その結果自動運転の方が安全だということが実証されたら、法規制の方も変わるんだろうね。

渡辺:昔、はじめて自動車ができたころは「馬車が前を走らないと自動車は走ってはいけない」とか今考えるとおかしなルールがたくさんあったらしいので、これから色々変わって行くことでしょう。

奥本:イーロンは「ブレードランナー風のピックアップ・トラックも出す。とんでもなく斬新だよ」と含み笑いしながら言ってた。

渡辺:サイバーパンク好きとしては見逃せない。

奥本:来年発表されるという噂。

渡辺:スペースXやトンネルを掘るボーリングカンパニーの話も出て、イーロン・マスクは余人をもって代えがたい経営者だと再認識した。そして彼は、世の中が思っている以上にものすごく変わっていて、まさに奇才だということがよくわかるポッドキャストでした。

奥本:私は、シリコンバレーを代表する起業家としてのイーロン・マスクのことを応援してきたのだけれど、今回テスラのオーナーになってその凄さを実感している。これからもどんどん自動運転技術を研ぎ澄まし、優秀なハードウェアとソフトウェアをリリースして、競合も巻き込んで環境に優しい自動車がどんどん世の中に増えていって欲しいと心から思うわ。

今回紹介したポッドキャストはこちら!
Elon Musk: The Recode interview
RECODE DECODE Hosted by Kara Swisher

連載:誰も知らないシリコンバレーの裏事情
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文=岩坪文子

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