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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

井上祥(写真=小田駿一)

「ほかに何か、質問はありますか」。
 
診察室で担当医にこう聞かれ、言葉がうまく出てこなかった経験がある人は少なくないだろう。「何が分からないのか」が分からなかったり、診断を聞かされたばかりで気持ちの整理がつかなかったり。医師と患者の間には、圧倒的な情報格差が横たわる。
 
この格差を解消するため、現役の医師らが2015年3月にローンチさせたのが、医療情報のプラットフォーム「メディカルノート」だ。配信記事数は常時約8000本。疾患数にして約3000の情報をカバーし、月間約1000万ユーザーを集める日本有数の医療系情報サイトに成長した。

なぜここまで多くのユーザーが集まるのか。同社の記事には、多くの医師が実名で登場する。すべての記事は、臨床・研究等の第一線で活躍する医師らへの取材、あるいは寄稿によるもの。時間も手間もかかるが「信頼性の高い情報を届けるために不可欠だ」と、創業メンバーで取締役の井上祥は言いきる。

「診療現場には2つの大きな制約がある。第一に患者1人にかけられる時間が限られるという『時間的制約』。第二に患者が診察室以外の場所で正確な情報を得にくいという『空間的制約』。デジタル化によって、最適な医療情報を得られる環境をつくりたい」

自身も医師として患者と接した経験から「この制約に不自由さを感じているのは患者だけではない」と強調する。
 
16年末には、キュレーションサイトによる不正確な医療記事が社会的に問題視され、医療従事者からも「患者に直接、信頼できる情報を発信する場が欲しい」というニーズが高まった。
 
メディカルノートのコンテンツ制作に協力する医師は約1500人に上る。まさにそうしたニーズがあるからこそ、多くの医師とユーザーをつなぐ場になった。
 
オンラインでの健康相談サービスの提供やヤフー検索とのコンテンツ連動など、次々と新しい試みを打ち出す同社。
 
患者側の素朴な関心に応えるだけではなく、専門的知見に裏付けられた情報を届け、誰もが最良の医療に出合える世界をつくる─。「メディアに留まらないプラットフォーマー」を自称する背景には、そんな将来構想がある。

文=加藤藍子 写真=小田駿一

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