日本にPHRは普及するか
日本では診療データを手に入れるには、カルテ開示請求が必要だ。開示までに1週間から1カ月近くかかり、病院が許可しないケースもある。手続料数千円や謄写代もかかる上、法律で定められた保存期間の5年を過ぎれば、医療機関は記録を破棄している可能性もある。
データの活用は個人利用だけでなく、今後の医学研究の進展や企業の新規事業の創出につながる点も期待できる。重要なのが個人情報保護とのバランスだ。例えば台湾では2000年代に国主導でポータルサイトへの健診、医療関連の情報集約が進んだが、近年、個人情報保護の観点からデータの二次利用が厳しく規制されるようになり、医学研究者も利用が難しくなった。
個人情報を守りつつ、活用されるPHRの仕組みをどのように構築するのか。GDPRでは「個人データは個人に帰属し、個人がコントロールする権利を持つ」という考え方が明文化された。個人情報の流用でフェイスブックが謝罪するなど、世界的に主流になりつつある考え方だ。
日本はオランダを中心に各国を参考にすべきだと藤田氏は指摘する。「日本には、手帳文化があり、母子健康手帳やお薬手帳を持っている人も多い。自ら健康データを管理する文化的素地はある。世界的な動きとマッチしながら、日本の強みを生かしたシステムをつくることが必要だ」。