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自らの健康情報を個人で管理する「パーソナル・ヘルス・レコード」。アイスランドやオランダ、北欧諸国のほか、アジア各国でも導入が進む。世界の事例を紹介する。


スマートフォンのアプリを開くと、予防接種履歴や、処方された薬の履歴、アレルギー情報、入院履歴などが、カラフルなアイコンとともに表示される。

よくある健康管理アプリのようだが、興味深いのはアイスランド当局が関与している点。英国発のスタートアップ、Digimeがアイスランド保健局と開発した。プログラムに同意したアイスランド国民は、好きな時に自分の携帯電話に自分の診療情報をダウンロードし、必要なら医師と共有できる。

このように、自分の健康に関するデータをポータルサイトなどで閲覧、管理できるシステムを様々な国が導入している。健康情報の電子化が進むとともに、個人が自ら情報を管理する「パーソナル・ヘルス・レコード」(PHR)が浸透してきた。

国によって制度は違うが、これらのデータは、マイナンバーや社会保障番号などと紐づいており、これまで別々の機関や団体で保管・管理されていた様々な情報が集約され、個々人がアクセスできるようになっている。これらの情報を医療相談や、診療の予約、電子処方箋での薬の受け取りに活用している国も増えてきた。

電子行政システムで有名なエストニアは、診療情報も全て電子化されており、ポータルサイトを通じて診察予約や診療履歴の閲覧もできる。データはブロックチェーン技術で管理されており、診療履歴などを不正に閲覧すると、特定されて処罰される。処方箋は電子化され、IDカードやモバイル端末を提示するだけで薬の受け取りもできる。

アメリカでも軍人やメディケアの受給者らに「ブルーボタン」と呼ばれる健康データをダウンロードできる仕組みを提供。電子カルテの普及率100%と言われるノルウェーなどの北欧諸国、オランダ、ドイツなどの欧州諸国、台湾、シンガポール、タイなどのアジア諸国も熱心だ。

国立研究開発法人国立国際医療研究センター特任研究員の藤田卓仙氏はオランダの取り組みに注目する。「オランダは、国主導でPHRを推進しようとして議会の反対にあった。国にコントロールされるのは嫌だ、という国民意識の表れだろう。結果として、官民が協力して新しい仕組みをつくっている」。

エストニアや北欧諸国が国主導で医療情報の電子化を進め、PHRを設計したのと対照的に、オランダは、政府が指定した1社ではなく、複数企業が参画。時間とコストがかかるが、国民に複数の選択肢が保証されている。

今年5月にEUは個人データの保護規則「GDPR」を導入。個人のデータを他のサービスでも再利用できる(持ち歩ける)データポータビリティの権利を定めた。オランダのPHRは、それを前提に考えられている。

また、「単にレコードを見られるだけでなく、それを使って医療相談や遠隔医療など、活用につなげようとしている点も注目だ」(藤田氏)。ただデータを渡すだけでは利用は普及しない。

文=Forbes JAPAN編集部

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