同財団は、米国、英国、イスラエルなど世界各国の教育、科学、文化、慈善団体に支援を行っている。これまで、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ハーバード大学、イェール大学、テルアビブ大学、スタンフォード大学などが支援を受けている。財団を率いるのは、投資会社アクセス・インダストリーズの会長で、世界的富豪として知られるLen Blavatnik氏だ。
Len Blavatnik氏(Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for VIONNET)
今回、寄付金の一部は、新薬候補物質の大量かつ迅速なスクリーニングを実現するための技術開発に用いられる。特に、がんを対象とした精密標的治療薬の発見が焦点となっているそうだが、現在、新薬候補の発見に機械学習が用いられることが増えている状況を考え併せれば、同大学院でも類似の研究を進めていくのではないかと予想できる。
また、デジタルデータやデータベースを活用した研究を発展させるため、生体工学者、物理学者、計算生物学の採用・養成に寄付金が投じられる。言い換えれば、人工知能、機械学習、拡張現実などの技術を使い、医学研究を強化するということになりそうだ。加えて、ハーバードで生命科学を専攻する研究者が利用できるよう、新しいコンピュータおよび、人工知能ツールを開発可能にできるよう設備を拡充していく計画だとしている。
Blavatnik氏は、革新的、画期的な科学的研究を支援し、その発見を治療に迅速に結びつけることを長い間目標としてきたとしながら、大学院側が寄付金を有効活用してくれることを確信しているとコメントしている。
先月10月には、マサチューセッツ工科大学が10億ドル(約1130億円)の予算をかけて人工知能大学を設立すると発表している。すでに資金の3分の2を調達しており、大学の正式呼称は3億5000万ドルを寄付したブラックストーングループのスティーブン・シュワルツマン会長から取り「MITスティーブン・シュワルツマン・コンピューター大学」となる予定だ。
米国では富豪による人工知能研究・開発への寄付が相次いでいるが、一部に台頭する中国へのけん制や対抗策という見方もある。ビジネスの最前線にいる米国の富豪たちは今、何を考えているのか。今後も、その動向を注視していきたい。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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