ビジネス

2018.11.19 17:30

マネーフォワード辻庸介「まだ達成率は1%。常に健全な危機感を持つべき」#STARTUPAWARD

マネーフォワード 辻 庸介


実現したいことの「1%」しか実現できていない
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──創業から5年で上場されています。これまでの手応えと課題をどう感じていますか?

上手くいっている感覚はありません。毎日、いろんなことに悩んでいますよ(笑)。この5年はスタートラインに立つための準備期間だったように思います。

この5年で最も大変な時期は、創業から間もない頃。他の人のポートフォリオが見えるお金版SNSのようなサービス「Moneybook」が大外れしたときですね。マーケットが求めているものを理解しないままサービスを立ち上げてしまい、結果は散々。結果的に現在の「マネーフォワード」にピボットできたのですが、当時は本当にツラかった。
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やっぱり、ゴールがどこか分からずに走り続けているのは怖いもので……。どこに向かって走っても反対に向かっている気がしてしまうんですよね。今はプロダクト・マーケット・フィットが広く知られていますが、当時はそんなもの知らなかった。

立ちあげたサービスが「プロダクト・マーケット・フィット」に到達するまでは苦難の連続でしたが、目指すべきゴールが見えてからは走り続けていくことができました。

──ご自身が目指すゴールを100%とすると、現在の到達度はどのくらいでしょうか?

まだ1%くらいですね。

「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションや、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」というビジョンに対してやれることは、まだまだたくさんあります。

個人向けの自動家計簿「マネーフォワード」は、現状の把握が可能になった段階。やっとスタートラインに立てたので、これからは改善の段階に入りたいですね。また自動貯金アプリ「しらたま」などの新サービスも成長させていきたいと思います。

法人向けは「MFクラウド会計」などのサービスによって、バックオフィス業務の自動化や大幅な効率化に貢献できていると思っています。

2017年からは、MFクラウドのデータを活用して、金融機関からの融資がオンライン上で完結するサービス「MFクラウド ファイナンス」も提供し始めましたが、AI(人工知能)などの技術を活用することで提供できる価値はまだまだたくさんあると思います。

現在は新設法人の半数がクラウド会計を使っているそうですが、企業全体ではまだ10%ほど。フィンテックが生活を本格的に変えるのは、これからだと思っています。

健全な危機感をもって実力を磨き続けることが大切

──ミッション、ビジョンからブレずに活動するために大切なことはありますか?

「起業してまで、やりたかったことは何なのか?」を絶えず、自問することです。

起業はそれなりのリスクを背負っての行動だと思います。そのリスクに見合うだけの努力はできているのか。また、きちんと結果を出せているのか。

こうした質問は常に頭の中で反すうさせています。僕がやりたいことは、ワンルームマンションで頑張っていた頃と何も変わっていません。

「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを実現するために、ユーザーフォーカス、テクノロジードリブン、フェアネスの行動指針をもとに、歩みを進めていくだけです。

──最後に、次世代の起業家にアドバイスをお願いします。

「信用」が何よりも重要だということです。信用をなくすのは一瞬ですが、信用をつくるのは時間がかかります。

例えば、出資してもらっている株主に対しては事業を伸ばすが約束。目先の損得を優先して、事業に関わっている方々の信用を失ってほしくないですね。

もうひとつは、競合他社をあまり気にしすぎないことです。もちろん、弊社も他社の動向を把握はしていますが、それだけに振り回されると、ユーザー視点が欠けてしまうこともあります。

焦燥感に駆られて意思決定の基準をブラしても、いいことは何もありません。健全な危機感をもち、実力を磨き続ける。ユーザーにとって、何が最適なのかを常に追求し続ける。それを一度やめてしまったら、会社はダメになってしまいます。

あとは、どんなときでも一人で仕事をしているとは思わないこと。事業は常にチーム戦だということを、忘れないでください。



ここ数年で日本のスタートアップ・エコシステムは成熟したと思います。情報が取得しやすくなったことで、いまの起業家はすごく優秀だと思います。

また、VC(ベンチャーキャピタリスト)からの投資額も増えましたし、『Forbes JAPAN』を筆頭に起業家を応援してくれるメディアも増えました。

この流れを止めてはいけない。私も常に勉強し、己を高めていくことで日本のスタートアップ・エコシステムに貢献していきたいと思います。私が役に立てるのであれば、どんどん次世代の起業家たちに自分の経験を伝えていきたいと思っています。

みなさん、これからも一緒にがんばっていきましょう!

文=野口直希 写真=小田駿一

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