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2018.11.19

成長神話の限界か、中国テンセントが時価総額18兆円を喪失

テンセントのポニー・マーCEO(Getty Images)

中国のテンセントは11月14日、今年の第3四半期決算(7-9月)を発表した。利益は予想を30%上回る233億元(約3800億円)となったが、そのうち88億元はフードデリバリーの「美団点評」の新規上場による投資利益などの一時的なものだった。

テンセントの事業の中核をなすゲーム事業は課題に直面しており、新規事業への投資も利益を圧迫している。調査企業「Pacific Epoch」のBenjamin Wuは「テンセントのゲーム事業の今後の見通しは厳しい」と述べた。

中国政府はゲームの規制を強めており、この流れは来年まで続きそうだ。テンセントは海外の有名ゲームの配信権の獲得に注力してきたが、政府の配信許可を得られていない。

テンセントは韓国のBlueholeの有名ゲーム「プレイヤーアンノウンズ・バトルグラウンズ(PUBG)」の配信権を獲得したが、政府から課金の許可が得られていない。中国政府は在韓米軍のミサイル迎撃システムTHAADに対する警戒感を高めており、報復措置として韓国のコンテンツの締め出しにかかっている。

調査企業「86 Research」のCharlie Chaiは「中国政府の報復措置はまだ続く。テンセントはPUBGの課金の承認を、来年の末になっても得られないかもしれない」と述べた。

テンセントをさらに苦しめるのが、政府が問題視する未成年のゲーム中毒の問題だ。政府の批判を受けて同社は、利用者の年齢を国民IDシステムと照合する仕組みを導入し、若年者の場合は1日のプレイ時間を最大2時間に制限している。

そんな中、テンセントはクラウド事業に注力を開始した。9月に事業再編をアナウンスした同社は、クラウド部門の売上が1年前の2倍に伸びたと発表した。しかし、「Canalys」のデータによると、中国のクラウド市場ではアリババのAliCloudが市場シェアの48%を握っており、今後は価格競争に突入する見通しだ。

1998年創業のテンセントは中国最大のインターネット企業に成長し、フェイスブックやグーグルと肩を並べる規模となった。しかし、テンセントの株価は今年に入り32%の下落となり、時価総額にして1630億ドル(約18兆円)が吹き飛んだ。

それでもテンセントには強みがある。中国経済の減速が伝えられるなかでも、同社の広告事業の売上は前年比で47%の増加だった。WeChatのユーザー数は10億8000万人に達しており、広告の配信数も増やしている。テンセントはかつて快適なユーザー体験を優先するため、広告件数を抑える方針をとっていたが、ここ最近ではその方針を転換した模様だ。

「テンセントは、本心ではユーザー体験を損ないたくないと考えており、WeChatの広告配信量に関しても慎重な姿勢をとっている。しかし、マネタイズの観点からいって最善の策は広告を増やすことだ」と86 ResearchのChaiは述べた。

編集=上田裕資

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