自然か人工か 健康と幸福を左右する「光の選択」

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技術を活用することで、薬剤を使わない新たな興味深い治療法が生まれる。こうした治療の選択肢からは、人間の生理学的側面を維持管理する新たなアプローチが生まれることもある。光が持つ可能性については臨床診療の分野で確立されているが、デジタルヘルス分野でも面白い機会点をもたらしてくれる。

私たちは光の中に生きている。光は、人間の体験や生理機能と非常に密接なつながりを持つ。眠ることのないまばゆい人間社会では、光がその一機能としてどこにでも存在する。そのため光は、私たちの健康や幸福に直接的な影響を与えているかもしれない。アップルでさえ、短波長ブルーライトが睡眠とパフォーマンスに影響をもたらす可能性を認め、ディスプレイの色を目にやさしい暖色系の色域に切り替える「ナイトシフト機能」を導入した。

人間は自然光とともに進化してきた。私たちの生活は100年前まで、日中は明るい日光で満ち、夜は炎の暖かな輝きで優しく照らされていた。人は毎日の、そして季節の自然光の移り変わりに反応するようプログラムされている。現在大半の人は残念ながら、日中十分な自然光を浴びていない一方で、夜はあまりに多くの人工光を浴びている。

人間の体は視覚や感覚を最適化するため、日中には青色光が豊富な明るい光を浴びることを求めている。しかし夜になると、リラックスし回復を遂げ、睡眠を取るため、青色光のない生物学的な暗闇が必要だ。

人工光は視覚的な作業を行うことを目的とし、暗闇のない環境を作ることに最適化されてきた。エネルギー効率に焦点を当てることで、不自然な青緑色の光が生まれ、屋内のスペースは日中ほとんど光がなく、夜は光が強すぎる不健康な空間となってしまう。人工光のおかげで物を見ることはできても、こうした光は感情的、美的、あるいは生理学的な健康を促進しないのだ。

自然光は、スペクトルの全ての色を均等に備えていて、1日の、あるいは1年のどの時点にいるか、地球のどの場所にいるかによって変化する。人間の目には暗所で機能する桿体(かんたい)視細胞と、明るいところで物を見る錐体(すいたい)視細胞に加え、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)と呼ばれる第3の光受容体があり、1日の時間感覚をホルモンサイクルと合わせている。

日中の青色が豊富な明るい光は、眠らず注意を怠らないよう体に合図を送るとともに、細かい部分や色が正確に見えるようにしてくれる。また、夕日やロウソクの温かく柔らかな光は肌の色合いを強調し、体にリラックスして回復し、睡眠を取るよう合図を送る。エネルギーや代謝、気分、睡眠、全体的な健康や幸福を調整するホルモンサイクルを合わせるためには、自然光に当たるサイクルを毎日繰り返すことが欠かせない。
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翻訳・編集=出田静

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