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LGBTからダイバーシティを考える



東京レインボープライド共同代表を務める杉山文野。札幌、大阪、名古屋でも全国的に参加人数は増えていると語る

「なんとなく無関心な日本人。それは悪いことじゃない」

杉山:たしか、ロバートさんには2015年頃に、「レインボープライドを見たよ。応援しているからね」とお声かけいただきました。当時はただ嬉しかったのですが、まさかロバートさんも当事者だったとは知らなくて……。

ロバートさんは、ここ数年のLGBTをめぐる変化をどう思っていますか?

キャンベル:少し話が変わりますが、東日本大震災のとき、仮設住宅ができる9月頃までは役所の方々も頑張ったと思いますが、そうではない民間の人々が暮らしを支えていたと感じたんです。

バラバラなはずの個人が同じ価値観を察知して、物事を動かしていく。それが伝わることで行政、さらには政治までも動かしていく。

政治がまずプランを設計するのではなく、ローカルからトップにパワーが伝わるのが日本なのではないでしょうか。

杉山:アメリカではトップ主導なのですか?

キャンベル:アメリカでは中間選挙がありましたが、一人ひとりの政治家が有権者から票を集めるトピックを鋭く察知して、指針を提示します。

戦後から続く日本の政治体制では、政治家個人が立法をふくめて直接的に自分の思考を政策に反映させる活動というのは難しい状況にあります。先にあるのが政党や官僚などの組織で、それらを動かさなければ話が進まない。

そもそも多くの日本人は、日常的に政治に関わらないですよね。関わったとしても話題になるのは、主にどの政党を支持するか。バスの中で高校生が政治について話しているのを見たことがありません。

ですが、それはアメリカでは日常茶飯事です。高校生なら高校生なりに、大学生なら大学生なりにオピニオンをもち、政治について話し合う。

最近は、最高裁の判事候補による女性への暴行疑惑がありました。結局就任は認められましたが、そのこと自体は今度の選挙で政治家の当落に影響を及ぼすと見られています。

杉山:みんなが政治を自分ごととして捉えているんですね。LGBTもそうですが、日本では「そんなの私には関係ないじゃん」と思ってしまう人が多いように感じます。

キャンベル:とはいえ、僕は日本の姿勢が劣っていると思っているわけではないんです。

日本では無関心に見える層にも「LGBTが暮らしやすくてもいいじゃん」と思っている人もたくさんいますよね。アメリカではこういう中間層が少なく、「権利を認めるべき」か「そんな権利はない」というように、はっきりと意見が二分されているんです。

どちらも一長一短ですよね。日本とアメリカでは、合意形成のプロセスが違うという話で、どちらかが優れているわけではない。

杉山:では、日本人はどのような形で合意形成するのでしょうか。

キャンベル:大きなビジョンも大事ですが、生活者としての皮膚感覚が大きいのではないでしょうか。マニフェストは存在しますが、その内容と同時に「その人たちを受け入れられるかどうか」が大きな判断基準になっている気がします。

日本人は村社会で排他的だと批判されることもありますが、むしろローカルルールさえ守っていれば輪に入れてもらいやすい。震災時の防災コミュニティも、それがベースにあるのではないでしょうか。

マイノリティの受け入れも、それと同じではないでしょうか。制度を整えるだけでなく、多くの人がLGBTに対して肌感覚で親しみを覚えれば、きっと「マイノリティ」であるという意識も薄れて生きやすい社会は実現すると思います。

対談の続きは明日公開。キャンベルは「カミングアウトは必ずしも正解とは言えない」と語った。

連載:LGBTからダイバーシティを考える
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文=野口直希 写真=小田駿一

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