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ただ、創業当初のプロダクトはもうめちゃくちゃなUIで全く使い物にならなかった(笑)。当時はとにかく開発に必死だったのでそれに気づくこともできず、なかなか導入していただけずにとても苦労しました。

その反省もあり、いまは臨床医としても週一で勤務をしています。自分のプロダクトをユーザー目線で使うことによって、医療行為をしている最中にどんな情報が欲しいか、どんな点に不安を感じるかといった改善点をリアルタイムに把握するようにしています。

──起業家兼医師として活動される中で、最も喜びを感じる瞬間はどんな時ですか?


650床規模の病院にサービスの導入が決まったときは、ひとつ大きなマイルストーンを達成できたのでとても嬉しかったですね。

でも、一番嬉しいのは仲間が増えた時です。一緒に働きたいと思った相手が、「事業に可能性を感じる」「社会に提供できる価値が大きそう」といった理由でジョインしてくれると本当に嬉しい。

──ここまでのお話を聞いていると、内発的な動機で選択をし、定量化できて合理的な価値判断をされてきた印象を受けます。そんな中、定性的な「メンバーのビジョンへの共感」に一番の喜びを感じるのはなぜでしょうか?

Ubie共同代表の久保と学生時代にサークルを運営していたのですが、この時の失敗経験が大きいと思います。

当時、みんなで都内の美味しいものを食べるサークルを立ち上げました。学祭での出店では利益率50%を記録し、部員も60名を超え、その時はとても盛り上がっていると思っていました。ですが、一代限りで廃部になってしまったんです。

当時は不思議でなりませんでした。メンバーも集めて利益も出していたのに、なぜ組織として自走しないのだろう、と。

ただ今振り返ると、2つの明快な理由がありました。ひとつは「自分でやった方が早い」と考えて仕事を全部一人でやっていたために、権限委譲が上手くいかなかったこと。もうひとつは、組織として自走していくために必要なビジョンを伝えていなかったために、熱量にばらつきがあったこと。「楽しく食事できたらそれでいい」と入部してくれたみんなと、本気で食を突き詰めたいと思っていた私との間に温度差があったのです。

この経験から、自分ひとりで影響を及ぼせる範囲には限界があること、組織として自走していくためにはビジョンに共感した仲間を集めることが大切だと学びました。だから、今は自分たちの描いたビジョンに強く共感してくれる圧倒的熱量を持った仲間たちが集まっていることに一番ワクワクしていますね。

──これからどんな問題解決に取り組んでいきたいですか?

現在病院向けに提供しているAI問診票は、これから2、3年で市場をとりにいきたいと思っています。地盤ができたらグローバルで他のソリューションも展開していきたいと考えていて、現在その準備も進めている最中です。

特にインドや中国などは、これから「社会保障としての医療」を整えていく段階なので積極的に参入していきたいですね。まだまだ、必要な知識や情報が無かったために不幸になる人はたくさんいらっしゃいます。僕らはその領域で、しっかりと社会のために役割を果たしていきたいと思います。



あべ・よしのり◎2015年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。血便を放置し48歳で亡くなった患者との出会いをきっかけにデータサイエンスの世界へ。独学でアルゴリズムを学び、Ubie質問選定アルゴリズムを開発。データベース構築に使用した論文は5万件以上。17年5月にUbieを共同創業、全国の病院向けにAIを使った問診システム(AI問診UBie)の提供を始める。

構成=小野瀬わかな 写真=林 孝典

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