外観はほとんどそのままに「激変」 進化したジープ・ラングラー

ジープ・ラングラー


今回は、まず厳しいオフロードから試乗を始めた。最初に気がついたのは、どちらのエンジンもオフロード走行にぴったりと合わせたトルク・カーブになっていることだった。

284ps、347Nmを発揮するV6と、272psで400Nmの2Lターボ。そのどちらも加速性は十分だけど、敢えてどちらを選ぶかと言うなら、よりスムーズで、低回転域でのトルクが太く 、また特にオンロード走行時に8速トランスミッションとの組み合わせが滑らかな(クリーミーな)V6に軍配を上げる。

どちらのエンジンも日本市場向けモデルは新しい8速トランスミッションとの組み合わせ。そして、なんとラングラー史上はじめてフルタイム4WDが搭載されている。これは、路面状況によって前輪と後輪へのトルクを自動的に配分する4Hオートモードだ。他には低ギア比とロックアップ式デフのモードもある。

このセッティングがあるおかげで、乗り手の心が思うままに、ダートも、岩場も雪上も、どこでも走破することができるわけだ。



試乗に行った名古屋近郊の勾配のあるダート・トラックで、新しいジープはどんな路面も征服したくてうずうずしていた。ラングラーのグリップが限界に至る前に、ほとんどのドライバーの方が限界に来てるはず。

一方、オンロードでは乗り心地がグーンとしなやかになったと言っても、2トンの車両重量とサスペンション・ストロークが伸びたため、コーナーでは多少傾きやすい。とはいえ、ステアリングは正確で的確だし、ダート路面でもアスファルト道路でもブレーキは優れた制動力を発揮する。

ところで、インテリアには意外な驚きがあった。外観の変化は最低限に抑えてあるのに、これまで魅力に欠けていた内装は一変、格段に機能的、かつモダンながらレトロな味もある、ジープにぴったりのデザインにアップグレードされた。

550ワットの9つのスピーカーを持つステレオを始め、室内のガジェットはテック好きをニンマリさせるだろう。フィアット500に習った赤と黒のカラーでまとめた室内からはなかなか離れがたい。



11年という歳月を経て、ジープは大きな変身を遂げた。もちろん、僕もそう予想していた。室内、エンジン、安全機能、そして全体としての品質も、オールラウンドに成長したSUVだ。そしてホットドッグやハンバーガーのようにアメリカを最も象徴するSUVだ。手の込んだ料理でないからとバカにしてはいけない。大衆が愛するのは、裏切ることのない味だ。

ジープは新ラングラーの素材は上を目指し、特に乗り心地や走りはかなり向上させた。それでも、ジープの味は変わらない。だから、きっとソウルフードのように売れ続けることだろう。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

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