セールスフォースへの挑戦状
それでも、SAPの巨大な売上規模に比べると微々たるものだ。同社の2017年の売上高は260億ドル(約2兆9600億円)で、顧客数はクアルトリクスの9000社に対し、SAPは41万3000社だ。テック企業同士の買収では、期待された統合効果を発揮できないケースも珍しくない。
しかし、両CEOはクアルトリクスの顧客インサイトをSAPの膨大な顧客に活用し、成果を上げることに自信を持っている。
近年、ユタ州の「シリコンスロープ(Silicon Slopes)」は、シリコンバレーに次ぐクラウドコンピューティング企業の集積地となっており、クアルトリクスはそのリーダー的存在だ。同社は10月にIPOを申請し、DomoやPluralsightと並んで今年中に株式公開を果たす予定だった。
IPO間近だったことが決断に影響しなかったかスミスに尋ねると、「上場セレモニーで証券取引所の鐘を鳴らすことは、死ぬまでにやっておきたいことのリストに残っているが、今ではリストの中身はもっと増えている」という答えが返ってきた。「IPOをしていたら時価総額は50億ドルを超えただろうが、我々はSAPと一緒になることを選んだ」とスミスは語った。
クアルトリクスの株主であったアクセル・パートナーズやInsight Venture Partners、セコイア・キャピタらにとって、大型エグジットとなった。アクセルとInsightは、それぞれ10億ドル以上を手にすることになる。
SAPのマクダーモットはインタビューの最後に、マーク・ベニオフ率いるCRM業界のリーダーであるセールスフォースに対して挑戦的なコメントを残した。
「この業界の大手企業の1社は、完成したばかりの新社屋が大きすぎることを後悔することになるだろう」