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2018.11.21

移動の「付加価値」は進化する ライドシェアは序の口だ

「Grab」の配車サービス(findracadabra / Shutterstock.com)

いまや、世界的に、交通革命や交通の未来が注目され、日本でも話題に上っています。ところが、日本では、交通機関や車両側からの声が主で、手段である移動が目的のように扱われ、ユーザーは置き去りにされている感があります。

産声をあげたばかりの「移動サービス革命」は、すでに海外の人々の生活を変え始めています。日本ではライドシェアというと、タクシーの敵といった構図で語られることが多いのですが、ユーザー視点に立つと、それはまったく当を得ていません。

ライドシェアや配車サービスは東南アジアの国々でも台頭しています。例えばインドネシアで、バイクタクシーのリーダー企業Go-jekは、実に幅広く便利なサービスを提供しています。

食事のデリバリーにはじまり、買い物代行、荷物の配達、引っ越しの手伝い、チケットを買う代行、薬の届け、マッサージ師の呼び出し、掃除、自動車修理、ネイル・美容サービスなどなど、Go-jekでインドネシアの人々の生活は大きく変わっています。

新事業については、ジョブ理論というセオリーがあります。顧客の「ジョブ=やる事」への「ソリューション=解決策」をサービスや製品として提供し、顧客の悩みを減らしたりハピネスを増やしたり、そういう視点から新事業のアイデアをつくるべし、という理論です。

この理論から考えると、顧客が自ら移動するのでなく、顧客の代わりに移動してジョブを済ませてもよいわけです。例えば、ライドシェアのウーバーは、日本ではレストランやファーストフード店の出前であるウーバーイーツを展開し、人気を得ています。

このように、交通機関やハードだけでなく、デリバリーや買い物代行なども合わせた交通+サービスの「移動サービス革命」が始まっているとみてよいのではないでしょうか。

米国では続々と新サービスが登場

米国では、アマゾンが、米ホールフーズを2017年8月に買収してアマゾン プライムナウにホールフーズが加わりました。おなじみの人気食品スーパー、ホールフーズの商品が、手数料は無料(10%ほどのチップ有)で、実質3時間ほどで届く。これなら(自家用車やライドシェアで)自分でお店に行かなくてもいいと好評です。



なお、この戦略的連携を、アルバートソンズなど他のスーパーが脅威に感じ、買い物代行のインスタカートは提携先を増やし、今年大きな資金調達(12億2100万ドル)をしました。つまり、市場全体が大きく動いたのです。

こうした米国の新サービス事情に詳しい、サンフランシスコ在住の三浦茜さん(ベンチャー投資のScrum VenturesマーケティングVP)は、「ウォルマートが各家庭の冷蔵庫へのデリバリーを発表して、賛否両論ありましたが、利用する人は多いと思います」と語ります。

また、買い物代行で頼まれたシャンプーを、風呂場のシャンプー置き場に置くという、ホテルのようなサービスを提供するニューヨークのスタートアップHello Alfredなどの例も挙げ、「ユーザーはどんどん怠け者になるでしょうし、事業者には色々とチャンスがあると思います」と指摘します。

サービスの高度化だけでなく、多様なニーズに応えるスタートアップも生まれています。例えば、子供の送り迎えに特化したライドシェアは、子供を相手にした実務経験のあるドライバーを詳細な審査を経て登録しています。そのほか、女性やシニア、スマートフォンを持たない人など、特定ユーザー層向けのライドシェアも生まれています。
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文=本荘修二

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