「二刀流の才能を証明するのには、ほんの数週間で十分だった」「同じシーズンにホームラン20本と奪三振50個の記録は空前絶後だ」と大谷をベタ誉めだ。ちなみに常時の指名打者として、新人王が授けられたのは1994年以来、24年ぶりという数字にも現地は沸いている。
100年ぶりのパフォーマンスに驚いた
新人王の投票は3ラウンドに分けられ、それぞれポイント制だ。第1ラウンドでは30ポイントのうちの25ポイントを獲得するなど抜きんでていた。3ラウンドのトータルは大谷が137ポイントも獲得し、2位のミゲル・アンドゥハー(ニューヨーク・ヤンキース)の89ポイントをぶっちぎり5割増しで突き放した。
大谷選手を打者として見るのか、投手として見るのか、ベーブ・ルース以来、99年ぶりとなる二刀流の選手の新人王レースには、実はアメリカのメディアも予想に窮していた。どちらをとっても立派な成績だが、しかし、アメリカンリーグ15球団の中での最も優秀な新人を選ぶには、二刀流ゆえに打席数が少ないし、ましてや故障もしたので登板数も少ない。
ちなみに、この新人王を選考するのは、全米野球記者協会という野球記者だけで構成された非営利団体(今年で設立110年)で、ほかにも最優秀選手賞や最優秀監督賞などに加えて、「アメリカ野球殿堂」入りする選手を投票で選ぶ。先のジャスティス記者も当然、投票資格者の1人だ。
ところが、ロサンゼルス・タイムズやニューヨーク・タイムズなどは、記者に投票参加を禁じており、理由は選手との癒着を恐れてのことだということだ。新聞社によって考え方がまちまちなのもアメリカ流。ただし、ニューヨーク地区を代表して投票した記者は、ヤンキースのアンドゥハー選手でなく、大谷選手に投票しているというあたりは、フェアを重んじる伝統が維持されている。
以前にもこのコラムで書いたように、アメリカ人の野球ファンは人種や国籍にはまったくこだわらない。選手の3割は外国人であり、出身国も20カ国近くになる。そのため、このニュースについての受け止め方は、純粋に二刀流という100年ぶりのパフォーマンスに驚いての反応だ。
ニューヨーク・タイムズは新人王のニュースを紹介しながら、「投げて活躍する選手にとって肘の故障は絶望的なことなのに、ならば打って貢献するという二刀流は、なんて特別なのだ」と感嘆を込めて解説している。