グーグル発表のセクハラ研修 さらなる問題を生む恐れも

サンダー・ピチャイ最高経営責任者(Photo by Pradeep Gaur/Mint via Getty Images)


#Metoo運動が起きて以降、男女間の壁の問題は悪化した。男性らは、女性と二人きりで接する際により神経質になっており、1対1でのミーティングを避けているという調査結果さえもある。結果、女性は男性が主である上級管理職と関わる機会を逃し、自分の出世を促してくれるメンターを見つけにくくなる。異性との接触は慎重にすべきだという印象を受講者に植え付けるようなセクハラ研修は、この状況を悪化させる可能性がある。

セクハラ研修が性別に対する固定観念を助長し、女性従業員の人脈拡大機会を制限するのであれば、少なくともセクハラ減少効果が期待できるのでは、と考える人もいるだろう。しかし残念ながら、研修がセクハラを減らす証拠はほとんどない。ある研究では、研修は受講者のセクハラに関する知識や、将来的にセクハラ行為に関わる可能性に影響を与えないとの結果が出ている。

また別の研究では、研修によってセクハラの定義に対する理解に混乱が生じたことが示された。さらに、「男らしさ=力」と考えている人にとって、セクハラ研修は最も効果が薄かったという研究結果もある。つまり、教育が最も必要な人間に対する効果が最も薄かったのだ。

グーグルの場合、単にセクハラ研修を増やして従業員に受講を強制しても、状況は改善せず、悪化する可能性がある。ただ、だからといって諦めるべきではない。

研修は重要だが、大切なのは量でなく質だ。グーグルはもちろん、従業員研修を実施する必要があるが、研修だったら何でも良いわけではない。同社には、研修を適切に実施する方法を見出すリソースも頭脳もある。同社が求め、必要とする研修は、既成のものではない。

グーグルがセクハラ研修を拡大するのであれば、企業文化を真の意味で変えるような効果的な研修を生み出さなければならない。だがこれは容易いことではない。同社は、実施する研修が意図せぬ結果をもたらすことなく効果を発揮するものであるかどうかを評価・再評価していく必要があるだろう。

全面的な改定なしにセクハラ研修を拡充しても、それは単なるリップサービスになる。女性従業員は、ハラスメントや性別に対する固定観念がなく、男女が適切な境界線を維持しつつ仕事上の友情や師弟関係を構築できるような職場で働けるべきだ。グーグルが約束した方針では、これは実現できないだろう。

編集=遠藤宗生

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