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2018.11.17 18:00

それは作業か体験か? 薄れる「仕事」と「遊び」の境界線

shutterstock.com

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日本全国を渡り歩きながら、「遊び」や「体験」と向き合う、世間から見ると少し羨ましがられるような仕事をしている。地域で活動されている人たちと向かいながら、どういう体験を作るべきか、どういう体験なら魅力を感じてもらえるのか、日々考えている。
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例えば、新潟県柏崎市では、小さな酒屋さんのお母さんが利き酒師であることを活かし「利き酒体験」を開発した。体験した人たちは、皆、日本酒を購入して帰ると言う。また、宮崎県日南市では、地元の漁師の方々と定置網漁の漁船に同乗・見学できる体験の商品化を進めている。



地域の人や地域の資源と向き合い、新しい体験商品を開発し、観光誘客をする。新しい大型観光施設を投資して建てるより、そこにある強みや魅力と向き合い、掘り起こし、体験商品にする方が効率的かつ魅力的だ。
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その中で、日常のちょっとした作業でも、見せ方、切り取り方、伝え方次第で、「お金を払ってやってもらっていること」が、受け手にとっては「お金を出してでもやりたい体験」となり、遊びとなるということを何度も目にしてきた。その体験が、地域への愛着と同時に、経済的なメリットを生む可能性を感じている。

トムソーヤの「ペンキ塗り」

この話をしていて思い出すのは、「トムソーヤの大冒険」におけるペンキ塗りの話だ。

いたずらをした罰でおばさんの家のペンキ塗りをさせられることになったトムは、周りの友達に「大事なおばさんのために仕事をすることがいかに楽しいか」を話し、興味を持った友達が「手伝いたい」と言っても楽しいので手伝わせようとしない。

すると友達は、「リンゴをあげるから……」と、トムにリンゴという対価を渡してペンキ塗りを楽しむ。終いには、ペンキ塗りをしたいという友達が群がってくるという話である。

トムはもともと、罰(仕事)としてペンキ塗りをしていたはずなのに、それを友達がリンゴを渡してまでやりたい「体験」に転換したのだ。通常、仕事や作業としてやっていることが、お金を払ってでもやってみたい体験になるという転換は、遊びや観光の文脈の中でもよく起こる。

ホタテを「自分で磨いて」から食べる

北海道の函館市からほど近い檜山の乙部町(おとべちょう)では、「ホタテの貝磨き」をという仕事を観光客が楽しむ「体験」に転換して観光商品として販売している。貝磨きは、通常であれば、地元のおばちゃんたちがアルバイトをしてお金を貰う仕事である。なぜなら、端的に言ってしまえば、ホタテの貝殻についた砂を落とすだけの作業だから。



ただ、先日この体験に同席してみると、函館市在住の観光客たちは珍しそうに、楽しそうに体験していた。この作業を体験することで、その後に食べる獲れたてのホタテも一層おいしく感じられる。

北海道の飲食店でホタテを食べるだけでも美味しいが、漁港というロケーションで、地元の漁師から「ホタテはどのように水揚げされるのか」「どんな工程を経て出荷されるのか」というストーリーを聞くという付加価値が加わることで、その思い出はより記憶に刻まれるものになる。


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文=内田有映

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