平成最後の年に振り返る、タイと日本の「米」の変遷

長粒米から短粒米までさまざまな米がずらりと並ぶタイの百貨店の米売り場


タイで広がるタイ産日本米

つまり、米のおいしさを決めるのは食べ方だ。和食を食べるならば、粘りのある日本米が食べたいし、香りや味が強いタイ料理を食べるならば、パラパラとした長粒米を食べたい。そう思うのは、日本人だけでなく、タイ人も同じようだ。

サンパモンコンチャイ氏によると、「日本の料理を食べるときは日本米のほうがおいしいのは当たり前。日本での留学経験が長かったが自分だけでなく周囲のタイ人も同様だ」と言う。また「日本米は糯米に似ているので最初は慣れないタイ人もいますが、慣れればおいしいと言います。自分の家族も週に1回は日本食レストランに行くし、コンビニのおむすびも食べますよ」とも。

現地の家電売り場を見ると、日本製の炊飯器には長粒米と日本米の炊き分け機能が備わっていた。炊飯機の普及によって長粒米を湯取り法で調理する家庭や飲食店は減っているという。


長粒米と短粒米の炊き分けができる炊飯器

タイでは日本食レストランの出店が増え続け、2018年度は店舗数が3000店の大台に乗った(JETROバンコク事務所発表)。日本産日本米は価格がネックで広がり方は鈍いが、日本食の浸透によってタイ産日本米は広がりつつある。

ある日本企業の中食では、現地で提供するごはんに、タイ産日本米と「カオ・ドゥ・マリ105」のブレンドを採用。タイの長粒米の中でも比較的軟らかい米を混ぜることで、タイ産日本米だけでは出せない粘り気を出している。とくに日本を何度も訪れているタイ人の富裕層には粘り気は受け入れられているという。


タイ産日本米を使ったすしのシャリ

長粒米をはじめ、イタリアのカルナローリ米からスペインのボンバ米まで、コメの多様化も進んだ平成でもあった。そして、海外での日本米の普及など、米の新しい可能性を含んだまま時代は進む。日本では米の消費量が減り続けているが、米の可能性はさらに拓けていくと期待したい。

連載 : 台湾と日本のお米事情
過去記事はこちら>>

文=柏木智帆

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事