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2018.11.12

「無電柱化」が分けた国際社会の明暗


昨今は、国や自治体も手を拱こまねいているわけではない。2016年には「無電柱化推進法」が施工され、翌17年には東京都が都道府県として初の無電柱化推進条例を施行した。今年4月には国交省が20年度までの3年間にわたる無電柱化促進計画を、東京都は10カ年計画を策定した。

課題は費用と時間である。国交省によると電線地中化のための共同溝整備費用は、1キロにつき5.3億円、都内の全区道を無電柱化するには5兆円以上を要する計算になる。コスト削減努力が続くが、おいそれと解決できる課題ではなさそうだ。

工期も悩ましい。1年間でせいぜい数百メートル、いや400メートルに7年間だ等々、諸説あるが、現在のペースでは気が遠くなるような時間がかかることは間違いない。

中央区永代通りは呉服橋の交差点。かつて勤務していた会社の本社所在地だった場所である。値上げされるたばこを取り出して、慌てて引っ込める。路上は絶対禁煙だ。「たばこ税収は年間2兆円。これを財源に無電柱化するなら、嫌われ者の喫煙者も少しは居場所ができるのに」。昔日の本社屋はとうに解体され、超高層ビルの建設が急ピッチで進んでいる。

「この技術力なら無電柱化のスピードアップが可能なはずだ」。技術の粋、加熱式煙草を咥える。途端に通行人の射るような視線に晒された。ああ、これもダメ、なのである。


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、シンジケート部長などを経て長崎大学経済学部教授に。現職は大和総研副理事長。クールジャパン機構社外取締役、南開大学客員教授を兼務。政府審議会委員も多数兼任。『最新 証券市場』など著書多数。

文=川村雄介

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