旅行業界ニュースサイト「スキフト(Skift)」の航空会社ビジネス記者、ブライアン・スマーズは、両社合併の可能性を早くから報じたうちの一人だ。
スマーズは9月、WOWエアの創業者であるスクリ・モゲンセン最高経営責任者(CEO)に対し、アイスランド航空との合併を検討する用意はあるかを尋ねた。モゲンセンの回答はこうだった。「そうなればネットワークを合理化し、状況を今よりずっとうまく活用できるのは明らかだ。考えなくても分かること。ただそれが実現するかと聞かれれば、私には分からない」。この「考えなくても分かること」は、それから2カ月足らずでほぼ既成事実となった。
私たちは、予想を的中させたスマーズに祝福の言葉を贈るとともに、両社がなぜ統合に動いたのかについて意見を聞いた。スマーズの回答はこうだ。「アイスランドは大きな国ではなく、似たようなビジネスモデルを持つ航空会社はそもそも2社も必要なかったのだろう。WOWエアはアイスランド航空よりも料金が安いが、骨子は同じ。どちらも北米・欧州をつなぐ乗り継ぎ1回の便を格安で提供している。両社とも、互いに加えて、北米・欧州間の長距離便航空会社のほぼ全てと競合している。分け合える総量がそもそもそれほど大きくなかった」
WOWエアは9月の時点まで、3億ドル(約340億円)規模の新規株式公開(IPO)に備えていたが、同社は2017年、売上高4億8600万ドル(約550億7000万円)に対し、2750万ドル(約31億2000万円)の損失を出したと報じられている。
「アイスランド航空もWOWエアも痛手を受けていた。燃料費は高騰を続け、その相殺のため運賃を十分に上げることはできなかった」とスマーズは指摘する。「アイスランド航空は長い歴史を持つ同国の大手航空会社なので、買収元となったことには驚かない。国内の競合企業を排除できたことは良いことだが、アイスランド航空には今後も険しい道が待っている」
プリメーラ、WOWエアと経営破綻や合併が続き、次に注目されるのは北欧系最大のLCC、ノルウェー・エアシャトル(ノルウェジアン)だ。WOWエアの買収についてノルウェジアンの広報担当者にコメントを求めると「ノルウェジアンの方からコメントはありません」という回答だった。
「ノルウェジアンは大丈夫かもしれないが、同社にとってほぼ確実に厳しい冬となるだろう」とスマーズ。「大西洋横断便の市場は冬に減退し、燃料費は上がる。ノルウェジアンは12月、1月、2月と苦しむだろう。かといって取締役会が同社を売却するとは限らないが、その可能性はある」
サウスウエスト航空やライアンエアーなど、LCCの中には短距離便で大きな成功を収めている企業もあるが、長距離便でLCCが成功できるかはまだ分からない。LCCの輝かしいリーダーだったWOWエアの買収が、また一つの手がかりとなるかもしれない。