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モデルの仕事で稼いだ収入の中から約25万ドルを使って、最初の1万5000セットのリップキットを製造。インスタグラム上で数カ月かけてその存在をちらつかせた末、発売はわずか1日前にソーシャルメディアで発表した。その結果、リップキットは販売開始から1分も経たず完売した。

ここで、母親のクリスが登場する。その年の12月、クリスはカナダ人のビリオネア実業家トービー・ルトケが運営するEコマースのプラットフォーム、ショッピファイを見つけてきた。カイリー・リップキットは6色展開のキットを50万セット用意し、「カイリー・コスメティックス」として翌年2月にショッピファイで販売を再開した。

ショッピファイ・プラスを運営するローレン・パドルフォードは語る。

「ネットユーザーがあそこまで一つのウェブサイトに集中するなんて、常軌を逸した事態でした。この2年半、カイリーほど多くの、一貫して熱狂的なファンを持ち続けているインフルエンサーは他にいません」

とはいえ、18〜34歳の女性が顧客層の大半を占めるブランドが、独立した事業のままで続くだろうか。スターは人気が落ちたり、事業に関心を失ったりするものだ。

カイリー・コスメティックスの成長はすでに鈍化し始めている。16年に3億700万ドルまで急増した収益は、17年には30もの新商品が加わったのに7%増にとどまった。カイリーは事業の売却について否定するが、母親のクリスは「常に前向きに検討する用意がある」と語っている。

カイリー・コスメティックスを買収したい企業はあるのだろうか。化粧品大手ウルタの商品化計画担当シニア・プレジデント、タラ・サイモンは語る。

「若年層顧客に人気のあるブランドを探している企業にとっては、一瞬にして優位に立てる買収案件になるでしょう」

セレブのブランドには、他の美容関連企業のように収益の6倍という企業価値はとてもつけられない。それでもその半額、つまり収益の3倍で売却することは可能だろう。市場調査会社ミンテルのサラ・ジンダルは、こう指摘する。

「数年後にカイリーが別のビジネスに乗り換えていても驚きませんね。自分の名前を利用して何かを売るのであれば、商品自体は何でもいいわけですから」

これほどの大金をこれほど手っ取り早く稼げるのなら、誰が大型エグジットなど必要とするだろうか。カイリーは今年中にもかつてのビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグが得た「史上最年少の自力で財をなしたビリオネア」という称号を手にしそうな勢いなのだ。彼女は「自力で財をなす」ことの定義を変えることになるだろう。

大した世の中になったものだ。


カイリー・ジェンナー◎アメリカのモデル、テレビタレント。10歳から家族とともにテレビのリアリティショー『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』に出演。2015年からインスタグラムなどのソーシャルメディアを活用してリップキットなどの販売を開始、「カイリー・コスメティックス」を設立した。18年2月、ラッパーのトラヴィス・スコットとの間に娘が生まれた。

text by Natal ie Robehmed photograph by Jamel Toppin for Forbes translate by Rie Kimura

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