「ねじれ議会」が米経済に好都合な理由

中間選挙の翌日、多くの記者から質問を受けたドナルド・トランプ大統領(Photo by Al Drago - Pool/Getty Images)

米経済は、政権が民主党と共和党に分離されている方がうまく行く──。私はこの考え方を常に信じていたわけではないが、10年前に経済学者の故ウィリアム・A・ニスカネンの説明を聞いたことで納得した。彼の主張はこうだ。

「米連邦政府は、上下両院のうち少なくとも片方が野党に掌握されているときの方がうまく(と言うか、比較的ましに)機能するかもしれない。興味深いことに、政府が分断されていると対立が生まれづらい。その上、支出も減少する。その基本的理由はシンプルで、一方の党が過激だったりばかげたりする措置を提案しても、もう一方の党がそれを制止できるからだ。米国が最も繁栄するのは行き過ぎた措置が抑制されたときであり、過去50年のデータでは分離された政府が行き過ぎを抑えられることが示されている」

ドナルド・トランプの大統領当選以降、明らかに度を越した行為が目立っている。それはトランプのツイッター投稿に限らず、反トランプ勢力でも同じことだ。新政権下では、かつては支出に厳しかった共和党が財政赤字を大きく増やし、非常に厳しい移民政策も実施され、各国との貿易関係は混乱に陥った。ねじれ議会は私たちにとって良いことなのかもしれない。

ニスカネンは2006年に執筆した論説記事によると、米国が第2次世界大戦以降で財務引き締めを実施した期間は2つだけで、アイゼンハワー政権の最後の6年間と、クリントン政権の最後の6年間だ。どちらの場合も、大統領が所属しない野党が上下両院を掌握していた。またニスカネンは同じ記事で、政権が分断されていると戦争も起きないようであると指摘している。

「米国の200年の歴史の中で、1週間超の地上戦を含む紛争は全て、統一政府によって開始されていた。20世紀に米国が参加した4大戦争(第1次世界大戦、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争)はいずれも、民主党議会の支援を受けた民主党大統領が開始した。また、現在のイラク戦争も、共和党議会の支援を受けた共和党大統領が開始したもので、このパターンに合致している」

ニスカネンはまた、大きな改革は分断された政府が策定した場合に安定する公算が大きいと主張。例として、レーガン大統領の減税政策は、民主党が多数派を占めた下院に承認されたものだったと指摘している。近年の例としては、医療保険制度改革法(オバマケア)が挙げられる。同法は民主党が上下両院を掌握していたときに承認され、共和党はできる限り早期の撤回を宣言した。まだ撤回には至っていないものの、米国の医療政策の先行きはいまだに不透明なままだ。
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編集=遠藤宗生

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