しかし、この件は単なる恥では済まなくなる可能性が浮上した。事態を重く見た英国の情報コミッショナー事務局(ICO)は、EUのデータ監督を率いるアイルランド当局(DPC)に調査を依頼した。
ICOの担当者は「フェイスブックの広告ターゲティングの運用が、欧州の一般データ保護規則(GDPR)に沿った形で行われているかを、アイルランド当局に確認してもらう」と述べた。
アイルランド当局は今後、調査に乗り出し、フェイスブックに処罰を与えるかどうかの検討に入る見通しだ。DPCの広報担当者はフォーブスの取材に「事態の詳細を確認次第、どのような措置が必要かを検討する。現状ではこれ以上のコメントは控える」と回答した。
ニュースサイト「The Intercept」は11月3日の記事で、同サイトの記者が「ホワイト・ジェノサイド」に関心を持つ人をターゲットとした、広告の掲載を申請したところ審査を通過したと報道した。ホワイト・ジェノサイドとは、白人至上主義者などの極右集団らが主張する言説で、将来的に有色人種の人口が増加し、白人はマイノリティに転落するというものだ。
10月27日にピッツバーグのユダヤ教の礼拝堂で銃を乱射し、11人を死亡させた容疑者の男も、この思想に傾倒していたとされている。The Interceptによると、驚くべきことにフェイスブックには「ホワイト・ジェノサイドに興味を持つ人」というターゲット設定が存在し、16万8000名のユーザーを配信対象とすることが可能になっていたという。
The Interceptの記者が、この件をフェイスブックに報告したところ担当者は謝罪し、このターゲット設定を無効化したという。
一方で、「ビジネス・インサイダー」は英国のケンブリッジアナリティカが費用を支払ったとする、虚偽の広告を出稿してみたところ、難なくフェイスブックの審査を通過したと述べている。
さらに「Vice News」も、米国の上院議員100人になりすました広告の掲載を申請したところ、フェイスブックの審査を突破したとの記事を掲載した。
フェイスブックは今年5月、政治広告の透明性を高める目的で「Paid for by」機能を追加し、誰が広告主であるかの情報開示を行おうとしてきた。しかし、この機能が簡単に悪用できることが発覚し、フェイスブックはさらなる窮地に追い込まれた。