日米「鉄道」体験比較 日本にあってアメリカにないものとは

Peter Titmuss / Shutterstock.com


なぜ、こんなにもルーズなのか? 鉄路が鉄道会社の所有になっていないことからくる複雑性や競合他社が少ないこと、年間1500億円も補助金を国からもらう半官半民体質が抜けないなど、理由はいくらでもあげられるが、基本的に経営力のまずさを指摘する声が多い。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、貨物鉄道会社の最大手、ユニオンパシフィック社が重い腰をあげて、やっとダイヤの見直しや合理化などに着手すると報じている。ユニオンパシフィックは、去年よりも平均運行時速が3%もダウンし、さらに駅での停車時間が4%も伸びるという危機的な状況を迎えている。上昇傾向の運行経費率も売上の63%に昇っているものを、2020年までに60%に落とす計画だと発表した。

2年かけてたった3%落とすことを、大々的に報じられるほど、鉄道事業は広く伸びすぎてきて動きが取れないということか。しかし、いち鉄道ファンとしては、もっと鉄道マンや鉄道ウーマンが、鉄道に愛を持つことだと言いたい。

筆者が乗ったアメリカの中・長距離列車の体験は50にも満たないので、統計的な判断は言えないが、しかし、そのだいたい半数は遅延か運休になり、そして事故なのか信号の故障でもあるのか、お客になんの説明もなくダラダラと歩くようなスピードで走り続ける列車運行に、プライドなどまったく感じられなかった。

日本の列車運行を見習うべき

一度は砂漠のど真ん中で30分も停止して、なんの説明もなく、車掌や職員たちは食堂車の奥で、私語で盛り上がっていた。仮に、なにかをアナウンスしても、かつての日本の国鉄の車内放送のように、誰にも聴き取れない、やる気のないくぐもった声が「音」を立てているだけで、アメリカ人の客も例外なく首を傾げている。せっかくの素敵な内装も車窓も、こういう「運行してやっているのだ」という態度にすっかり興ざめし、ただちに降車したくなるのだ。


アムトラックのラウンジカー(Supannee_Hickman / Shutterstock.com)

折しも、エコブームで、企業は鉄路での輸送ということを引用して、「エコ企業」だと宣伝するトレンドがある。これを追い風にして、鉄道会社もこれまでのルーズな性根をあらためて欲しい。

会社の幹部は、ぜひ日本に来て、鉄道オタクたちに無数のカメラの放列を向け、リスペクトされる列車運行を見るべきだ。カメラレンズがのぞいているのは、美しかったり、またはレトロな「工業デザイン」だったりではなく、きっと、それを運行する人々の「プライド」だから。

文=長野慶太

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