──家庭用の調理ロボットも開発されているんですよね。私たちの家庭にやってくるのはいつ頃になりそうですか?
これから5年と経たずに、普及できるのではないかと考えています。実際に今、ボタン一つで焼きたてのパンに目玉焼きやソーセージ、コーヒーという理想的な朝食を作ってくれる調理ロボットを開発しています。
このロボットは、来年2月に行われる世界最大規模のクリエイティブフェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に出展予定で、現在急ピッチで開発を進めています。とはいえ、夕食のようにバリエーション豊かなメニューを高いクオリティで作るとなると、他の調理家電などと組み合わせていく必要があります。
──調理家電との組み合わせとは、どのようなイメージでしょうか。
レゴブロックのように、ロボットや調理家電、周辺機器を組み合わせて、各家庭の理想の環境を作っていくイメージですね。調理ロボットは他の調理家電とカニバルのでは? とよく聞かれるんですが、組み合わせることでより高度な調理が実現できると考えています。
例えば食材の入っている冷蔵庫と各々の調理家電は繋がないと調理をスタートできませんし、調理家電同士の繋ぎこみも出てくるでしょう。その繋ぎ手としてロボットが活躍します。それらをどう繋ぎ合わせて、どこを自動化するかなどを、プログラミングやAIも含めてデザインしていくのが私たちの役割りです。
──ロボットの開発というのは、ロボットを使った調理全体のシステム環境を作り上げるということなのですね。
私たちはロボットそのものを作っているわけではありません。すでにあるロボットを使って、他の機器などと融合させながら、人々の生活をより良くしていくことが使命です。
また、ロボットにも種類があって、私たちは人間と力を合わせて活動する「協働ロボット」に特化した開発を行っています。工場などで使われる「産業用ロボット」は高度な作業が可能ですが、安全性には欠けるため、人と同じスペースで動かすことができません。
協働ロボットは人と同じスペースで働けるよう、安全性に考慮して作られているので、人とロボットが協力し合いながら調理を行っていくことが可能なのです。幸いなことに、ここ数年で協働ロボットがコモディティ化しており、価格もグッと下がってきています。家庭レベルでの実装がしやすい環境になってきているのも、背景として大きいですね。
こちらは朝食ロボットのプロトタイプ(開発中のため一部のみ)。取材時にはロボットが卵を割る瞬間を目撃。
──人と無機質なロボットが協力し合うという世界観が、あまりリアルに想像できないのですが……。
人はできたてのご飯を作ってくれる人に対して、すごく愛着を感じますよね。温かい食事の匂いだったり、質感だったり、味だったりっていうのは、人に安心感や嬉しさを与えてくれるものだと思います。そのエモーショナルな部分をロボットがやってくれたら、人はロボットに対して感謝したくなり、愛着を感じるのではないかと考えています。
単純に人間の仕事をロボットがやってくれて便利、ではなく、「いやぁ、ありがたいな。うちのロボットってすごく良い子なんだよね」と、人間が思えるところまでもっていきたいですね。