ビジネス

2018.11.14

「文字を読むメガネ」開発者が実践する社会のデザイン #NEXT_U30

オトングラス代表 島影圭佑




人工物を起点として社会に問いを投げかけ続ける


──現在の環境、とはどういうことでしょうか。

今は、ホワイトキューブの中で行われるショールーム型以外の方法でも実社会に新たな人工物を介入させ、問いを投げかけることができる環境が整いつつあると考えています。

3Dプリンターをはじめとしたデジタルファブリケーションによって、GAFAでも大手メーカーでもなく、持たざる者である個人が、ありえるかもしれない未来の人工物を「今、目の前に」つくることが可能になりました。OTON GLASSもその一例だと考えています。

様々な人工物が起点となって今まで出会わなかった人々が集まり、人工物がつくりだす未来を想像し、議論し、行動を起こす共同体が生まれる。ダン&レイビーがあえてショールーム型の実践に振り切ってきたものを、僕らの世代ではデジタルファブリケーションを用いることで、実社会の中でスペキュラティブデザインを機能させることに挑戦できるのではないかと考えています。

──これからは、どんなことをしていきたいと考えていますか?

まずはOTON GLASSを必要としている人々に届けていきます。会社では社会実装を進め、大学ではより良いものにしていくための研究開発を進め、また会社と大学間での連携もより綿密にしていきたいと考えています。

次に、先にも話したように、自身の実践をヴィクターパパネックやダン&レイビーといったラディカルなデザインを志向したデザイナーの歴史と接続したいと考えています。産業革命以降のものづくりを批評し、デジタルファブリケーション以降の新たなものづくりのフレームワークをつくりたい。

最後にこれは個人としての活動ですが、僕自身を更新しうる実験的なプロジェクトにも挑戦していきたいと考えています。これは同世代のクリエイターとの協働を中心に取り組んでいきたいと思っています。



しまかげ・けいすけ◎1991年生まれ。起業家, 研究者, デザイナー。オトングラス代表取締役。筑波大学デジタルネイチャーグループ(落合陽一研究室)助教。クロスダイバーシティ(JST CREST採択プロジェクト)メンバー。慶應義塾大学博士課程。専門はデザインリサーチ、インクルーシブデザイン、スペキュラティブデザイン、デジタルファブリケーション、HCI。

>>30 UNDER 30 2018 特設サイト

文=野口直希 写真=小田駿一

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