ビジネス

2018.11.08 08:30

効率性よりも感情を優先する「シェアエコ2.0」

(左から)小林昌樹、井下孝之、古塩将人

民泊・ライドシェア(相乗り)で注目を集める「シェアリングエコノミー」。次を担う、人の気持ちをつなぎ「新しい価値」を生むスタートアップが出てきている。


インターネットを使った宅配クリーニング「リネット」を運営するホワイトプラスの井下孝之。「クリーニングの価値とは何か?」という問いに一つの答えをだしたのは遠くイタリアの地にあるアパレルブランドの工場だった。

従業員全員が白衣を着ながら、「うちの生地はすごい」と口々に言う。生地に触れた時に気がついたのは「お客様が求めているのは、キレイに洗うことだけではない」ということだった。

顧客が求めているのは、お気に入りの服をまた気持ちよく着ること。着心地や風合いの良い、その服を着て自分が元気になること。そして服を着ることで自信につながり、人に会いたくなることではないか。

井下はそこからクリーニングが持つ価値を追求していく。利便性だけではなく、人間の感情が動く、価値の革新。そこで出会ったのが、現在、パートナー工場の一つである、ハイソフト・ケミカルズの古塩将人社長らだ。「本当に突き詰めているプロフェッショナルたちと一緒にやりたい」と井下が口説いた。現在、リネットの象徴とも言える、プロが一点一点手仕上げする

「デラックス仕上げ」ができるのも彼らの存在があるからだ。「組んだ決め手は、お客様にいいものを提供したいという井下社長の熱意ですね」(古塩)

そんな井下が大事にしているのは、実現したい世界観と価値を共有すること。

「僕はシェアリングエコノミーには2種類ある気がします。ひとつは空いているリソースを使うことで価格を下げること。もうひとつは、新しい付加価値を創出するために関係性をつなげること。関係者全員が気持ちいい関係が築けることです」(井下)

セレクトショップ運営のデイトナ・インターナショナルのフリークスストアとのコラボレーションもその成功例のひとつ。2017年6月30日から7月31日までのキャンペーン期間に、同社公式EC上で新作アウターを購入したお客様に向けて、リネットの「デラックス仕上げ」割引を特典としてつけた。その結果、対象アウターの売り上げが前年比850%増に。以降、実店舗にもサービスを拡大。同社フリークスストア・Eコマース部部長の小林昌樹は話す。

「我々も本質的にいいサービスを、大事なお客様に伝えたいという気持ちがある。『本当に便利だから一緒に取り組んでいます』『クリーニングにお困りでしたらお薦めです』と。お気に入りを見つけていただくだけでなく、適切なケアを行うことで、長く楽しんでいただきたいというストーリーが伝わったのではないか、と思います」


小林昌樹◎デイトナ・インターナショナル フリークスストア事業部Eコマース部部長/古塩将人◎ハイソフト・ケミカルズ代表取締役(リネット専門工場)/井下孝之◎ホワイトプラス代表取締役兼CEO

文 = フォーブス ジャパン編集部 写真 = 若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN ストーリーを探せ!」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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