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2018.11.14 08:00

ギグ・エコノミー時代、日本人に欠けてる「パーソナルブランディング」


パーソナルブランディングは、キャリア上の評判だと位置づけることもできるかもしれません。

米国では、ギグワーカーとの契約時のみならず、フルタイムワーカーの採用時にも、ネット上にみられる評判、仕事の履歴、場合によっては、その他ソーシャルネットワーク(SNS)上の情報もチェックされるといわれています。

ギグ・エコノミー時代においては、SNSの使い方が採用や雇用に影響を与えるという意味で、学生のころからパーソナルブランディングを考えたSNSの使い方や選び方を指導した方が良いとさえ言われています。

ギグ・エコノミー時代に働く人にとって、どのSNSがもっとも自分のキャリア目標の実現に合っているのかを考えて選ぶことを研修などで提供している会社もあります。

日本ではまだまだ積極的な利用が少ないようですが、プラットフォームの選択の第一に上げられるのがリンクトインです。

現在キャリアプラットフォームとして最も検索の上位にくるリンクトインですが、情報のメインテナンスも含め、プロフェッショナル分野における情報提供の仕方など、ギグワーカーとしてのキャリア形成を指南するビジネスもあります。

パブリックにおける従業員の評判(働いている会社でどのような学びを得ているか、キャリア形成に必要な専門性を磨いているかなど)は、企業にとってもブランドを維持する上で重要な要素であるとして、リンクトインへの登録を推奨している企業もあるようです。

ギグワーカーの課題

人生を充実させる働き方としてのギグワークが注目を浴びる一方、どう自分の専門性を磨き、キャリアパスを築いていくのか、競争過多になるワーク市場におけるオーバーワークや低費用での契約などが起こさないようどうコントロールするのか、といったことも課題として浮かび上がってきています。

ギグワーカーが利用するプラットフォームのアルゴリズムのマネジメント技術が、高度な柔軟性、自律性、タスクの多様性、複雑性を提供する一方、その制御メカニズムは、低賃金、社会的孤立、非社会的および不規則な労働時間、過労、睡眠不足および疲労の原因ともなり得うることをオックスフォード大学のAlex J Wood、Mark Graham教授らがリサーチ結果として「Good Gig, Bad Gig: Autonomy and Algorithmic Control in the Global Gig Economy」の中で警告しています。

また、Vlerick Business SchoolのリーダーシップとコーチングのKatleen De Stobbeleir教授も、「これらのプラットフォームは、組織への帰属感を得られないことからくる社会的孤立、求められる高い自主性と責任など、心理的リスクをもたらす。仕事上のバランスと罪悪感を悪化させる可能性もある」とも述べています。

柔軟性と自律性を選んだ結果として求められる責任や働き方は、相当の自己マネジメント能力を要するでしょう。

各人の貢献を最大化できるマネジメントの仕組みも取り入れている、フラットでオープンな組織にとっても同様のコンピテンシーが求められるという意味で、働く環境は、ますます私たちに高度な自己マネジメントを求めてきています。

ギグ・エコノミーの影響がグローバル規模で起きていることを考えたとき、日本の企業で働いている従業員は、それを踏まえた経験や研修、働き方が提供されているでしょうか? テレワークや副業がようやく認められ始めたという状況には、やや不安を覚えます。

とは言え、日本でもシニア層を対象としたスポットコンサルティングサービスプラットフォームも拡大を見せ、ミレニアル世代の働き方の延長上から語られるギグワーカーとはまた違った側面から、働き方の支援やコミュニティーネットワークを作る仕組みも必要かもしれません。

いずれにせよ、始まっているギグ・エコノミーの時代。「後発組」としては、ネガティブ側面のみにフォーカスしてしまうことなく、その良さを取り入れるチャレンジが今始まったばかりと言えるかもしれません。

文=中原孝子

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