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世界を目指す「社内発イノベーション」事例


そこで坪井氏は行動に移す。外部の人に会って話を聞き、一つひとつイシューを蓄えていった。

「Give firstの精神の方が沢山いて、彼らのコミュニティで同じような悩みを持つ人と課題を共有することができました」

どうやるか、だけでなく、アイデアについても相談した。社内で新規事業を提案すると、近視眼で粗探しされてしまうこともあるが、その対策についてもアドバイスとしてもらえたという。

「同じ日本にいて、こんなにも考えも物の見方も違うのか」と驚くほどの衝撃をくれたのは、デンソーアイティーラボラトリ元代表取締役社長の平林裕司氏。多くの賢人を紹介してもらい、視野も視座が広がったという。いまデンソーに籍を置いているのも、この出会いがきっかけだ。

地道な継続が逆転を生む

予算ゼロは困難を生んだが、ポジティブな結果ももたらした。会社のバックアップなしでの新規事業立ち上げだ。

当時、坪井氏は、農業分野でカメラが扱われていないことに着目していた。食品の品質管理を画像処理システムを使っていた経験を活かし、様々なアプローチを考えていたが、予算がなくプロトタイプがなかなか作れない。社内にも農業の知見が少なく、「適正がない」という言葉で片付けられ苦しんでいた。

そんな折、農林水産省の「農業・食品産業技術総合研究機構」が「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業」の公募をしていることを知る。締切2週間を切っていたが、応募してみると採択され、委託研究として続ける機会を得た。この間に大学教授やJA、関連事業者などと話し合いながらブラッシュアップを続けた。

1年後、再び上司に提案するも、「ビジネスモデルが甘く、収益性がなっていない」と却下される。ほどなくして、今度は締切前日に、経済産業省主催の「始動 Next Innovator 2015」に応募。見事選出され、シリコンバレー訪問のチャンスを得た。

「現地で、世界的に名の知れたイノベーターから、ビジネスモデルに対するアドバイスがもらえてビルトアップされました」

この取り組みが新聞に載ると、社長や広報の目に止まり、会社のなかで注目を浴びるように。これまで情報を出す立場から一転、情報が集まるようになり、最終的に開発予算もリソースもついたという。

坪井氏は「セレンディピティみたいなもの。運がよかったです」と謙遜するが、どんな苦境に立たされても諦めず、目の前のことに真摯に取り組み、アンテナを張り巡らせていたからこその成果であることは、誰の目にも明らかだ。

予算獲得はイントレプレナーにかかっている

社内で新規事業を提案するにあたり、いくつか抑えておきたいポイントがある。中でも坪井氏は、「予算の伝え方」がカギだという。



「予算には、『意思を示すもの』『予測するもの』という2つのテーマがあります。当然嘘は良くありません。騙して通しても自分に降りかかるだけです。ただし、期待を持たせるためにどう話すかは、イントレプレナーの力量にかかっています」

ハードの場合は比較的売上予測がつくが、サービスでの新規事業はJカーブになりがち。いずれにしても、指数関数的にグロースする部分はイメージしづらいが、「未来はこうなります」「未来はこういうステップになります」と語る努力が必要だという。

文=木村忠昭

デルデンソーライカ
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