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2018.11.10

美容は「独立系ラボ」の時代へ シャンプーで成功した女性起業家

NYでのイベントに参加するナンシー・トゥワイン(左、Getty Images)

ここ数年、独立系ラボで製造される美容製品は多い。米国のカリスマ美容ブロガーでメイクアップ・アーティストのフーダ・カタンや、カイリー・ジェンナーといったセレブ(2年前に設立した「Kylie Cosmetics」はこれまでに約700億円を売り上げた)まで、多くの女性が独自のブランドを立ち上げている。

頭皮の不純物を取り除く天然成分配合のシャンプーを開発したナンシー・トゥワイン(33)は、ニュージャージー郊外の契約ラボで、8オンスのタブ型容器を念入りにチェックしていた。

ヘアケア企業「ブリオジオ」創業者である彼女が開発したシャンプーは、通常スーパーで売られている大衆向けシャンプーの9倍もの値段だ。コスメ業界では多くのセレブが発信力を頼りにブランドを立ち上げるが、トゥワインは異なる。曰く、ゴールドマン・サックスでの7年間は、彼女にとって非常に有意義だった。

思い切った値付け、原材料の直接仕入れ、製造コストを抑えるためのオーダー調整、パートナーとの関係構築など、着々と準備を進め、店頭に並んでからわずか4年のブリオジオは、毎年収益を増やしている。コスメ専門店セフォラや百貨店ノードストロームなどの店舗のほか、バーチボックスやイプシーなどのサンプルサービスを通じた年間売上額は、1000万ドル(約11億円)を超える。

「当初から私は、ブランドへ再投資するだけでなく、常に妥協せずに済むように、十分なマージンを確保しておきたいと思っていました」とトゥワインは語る。

アフリカ系米国人のトゥワインは、人種を特定せず、すべての女性たちにアピールすべく努力を続ける。他の多くのブランドとは異なり、ブリオジオは人種別ではなく髪質別(くせ毛、巻き髪、乾燥髪、薄毛)に消費者をターゲットしている。

天然素材の配合によるブリオジオ製品には、硫酸エステル(皮膚炎の原因)、シリコン(乾燥髪、薄毛の原因となる可能性)、フタル酸エステル(高濃度有害物質の可能性)、パラベン(EUでの禁止物質で、エストロゲン受容体の作用)、DEA(皮膚炎の原因)、人工染料等は使用されていない。

「周囲からは、“シリコンなしで実現するはずがない”と言われてきた」とトゥワインは言う。「私が独自にリサーチし、理想的な効果を目指した配合を、開発担当の化学者へ指示しなければなりませんでした」

美容業界ではいわゆる環境に優しいクリーンビューティに注目が集まる一方で、一般に非毒性のヘアケア製品が少ない上、髪質を改善する製品はもっと少ない。業界内のこのギャップが、大きなチャンスを生んだ。

ブリオジオの製品のほとんどは、他の高級ヘアブランドよりやや安い価格設定だが、これはトゥワインが誇りとしている点のひとつである。競争力のある価格設定のおかげでトゥワインは、小売業者に対して「最高級品よりも安い価格に抑えられたハイエンドの非毒性製品を求めている、これまで取り込めなかった新たな消費者層へもアプローチできる」と自信を持ってアピールできた。

「彼女の設定するプライスポイントは評価できる。時間をかけてよく考えられているから」と、アフリカ系米国人の美容サロンオーナー、ダナ・ホワイトは言う。ホワイトがデトロイトで新たにチェーン展開するパラリー・ボイドは、縮れ毛やくせ毛にも対応する予約不要の美容サロンだ。

「彼女の製品には出し惜しみしない」
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翻訳・編集=フォーブスジャパン編集部

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