ビジネス

2018.11.06

「全員経営」を実現するためのコミュニケーション戦略とは?|新居佳英

アトラエ代表取締役 新居佳英

求人メディア『Green』やマッチングアプリ『yenta』など、オリジナリティあるサービスを次々と展開し成長を遂げてきた株式会社アトラエ。社員の意志を最大限尊重する組織文化でも知られ、2016年に東証マザーズへ上場、2018年6月に東証一部への市場変更も果たした。同社代表取締役の新居佳英氏に、起業家の素養や、組織文化のつくり方などをドリームインキュベータの下平が聞いた。(全6話)

企業文化をつくるコミュニケーション戦略

──前回、御社の独特な組織コンセプトや仕組みについてお伺いしました。続いて、企業文化を醸成する方法についてもお聞かせいただけますでしょうか?

弊社はかなり強固な企業文化を持っていると思いますが、そこに大きな影響を与えているのが「新卒入社比率の高さ」です。弊社の社員は7割くらいが新卒入社の社員です。新卒入社の社員は当然ながら初めて働く会社なので、弊社の文化に強く影響されます。そういった社員が7割もいると凄く濃い色になっているので、中途で入って来た人たちもその文化に簡単に染まっていきます。

加えて、継続的に文化を強固にしていくために「コミュニケーション戦略」はしっかりとやっています。これも先述のワーキンググループ中心に考えてもらっています。

例えば、会社の事業以外の課題点を、みんなで出し合いディスカッションする機会を月に1回設けています。月末の金曜、夕方4時くらいから3時間程度行なうのですが、そこでは業務のチームとはまた違うチームをランダムで組んで、会社のビジョンや行動指針、今抱えている組織的課題などについてディスカッションしています。

また、私が矢面に立って社員の質問を受ける場も設けています。「給与水準がまだ低いと思うのですが、社長はそれに対してどうお考えですか?」など、辛辣な質問も多いですね。(笑)

端的に言いますと、うちの企業文化は「全員が自分を会社の経営者だと思っている」ことです。悪いことや課題は一緒に変えていけばいい。そういった文化を反映して、様々な施策も練られています。

──業績指標についても同様に社員の皆さんはオーナーシップを持たれているのでしょうか?

そうですね、いわゆるKPI管理といったものは、ボードメンバーからはあまり行なっていません。

うちのやり方としては、まず社会や株主に対してコミットする計画を立てる段階で、現場とコンセンサスをとります。なので、立てた計画を社員に共有する段階では「みんな、この数字知っているよね」という状態です。あとはボードメンバーが管理しなくても、社員全員が「自分が経営者」だと思っているので、責任を持って計画を達成するためのアクションを実行してくれています。

進捗をチェックする仕組みとしては、毎月報告会を実施して社員全員で議論する場を設けています。「他のチームが広告コストを上げたいと言っている。それならばうちのチームのコストを下げないと会社計画を達成できないんじゃないか」といった調整の議論まで、メンバー全員で議論しているんです。

KPI管理をする目的は、何かあった時に早めに察知して、早めに修正することです。ですので、察知する仕組みは必要ですが、修正方法までをマネジメントするということはありません。全員が意欲的であれば、自発的に改善していってくれるのです。
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文=下平将人 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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