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フリーランスのライター・編集者


この3つの採用戦略は、社員をつなぎとめるのにも効果を発揮している。レイクは続ける。

「CPOとしてボックスの海外オフィスを訪れる楽しみの一つは、そこで5年、10年働いている社員たちの話を聞くことなんです。彼らはほかの会社でも働けるのに、なぜ何年もボックスにいるのか。そう尋ねると、答えはきまって『成長できて、学べる機会があり、社会にインパクトを与えられるから』。場所や職種を問わず、答えはいつも同じです。この会社は毎年大きく成長しているから、必ず新しい仕事、新しいチャレンジがある。だから生涯にわたってキャリアを築くことだってできるんです」

二つのキャリアパス

では社員たちは、そんなやりがいのある職場でどんな働き方をしているのだろうか。3階のエンジニアフロアを訪ねると、平日の昼間だというのに、席はがらがらだった。

「毎週火曜日はGSD(社訓の一つ、「仕事を片付けろ」)の日です。だから多くのエンジニアは家で自分の仕事に集中します。会議も基本的にはありませんね」

そう語るのは、アメリカの本社オフィスに勤務する唯一の日本人、糸井名生(なおまる)。セキュリティが専門のシニアスタッフエンジニアだ。


シニアスタッフエンジニアとして、セキュリティやアイデンティティ管理の業務を担当する糸井名生。ボックス本社オフィスを初めて訪れたときの印象を「天国かと思った」と振り返る

糸井はミシガン大学で博士号(コンピュータ科学)を取得し、大手IT企業のほか、スタートアップ4社に勤め、さらに起業経験もある。

ボックスに入社したのは2年半前のことだ。

そんな糸井に他社との違いを尋ねると、「ボックスはとにかく人がナイスですね」と答えた。

「スタートアップだと『死ぬほど働け』みたいな会社もあります。『ナイスじゃなくていいからプロダクトを作れ』みたいな。でもボックスはCEO(アーロン・レヴィ)が人間性を大切にしていますし、互いを尊敬するカルチャーがありますね」

糸井は毎朝、車と自転車を乗り継いで9時半頃に出社。仕事柄、ほかのチームとの打ち合わせが多く、1日の半分は会議に費やされるという。夕方6時くらいに退社し、子供をピックアップして帰宅。3人の子供たちが寝静まってから、夜1〜2時間ほど仕事するそうだ。「技術者なのに会社ではコードを書く時間がほとんどないので」と糸井は笑う。

日頃の業務では、スラックやGmailのほか、Box Notes、Box Editなどをよく使う。Box Notesは複数人で同時編集可能なドキュメント作成ツール、Box Editはボックスのサイト上で直接ファイルを編集できるアドオン。このように自社製品か他社製品かを問わず、「ベスト・オブ・ブリード(最善の組み合わせ)」のテクノロジーを使って業務の効率化を図っているのは、同社の社員に共通する「働き方」だ。

転職を繰り返してきた糸井だが、今後のキャリアについて尋ねると、ボックスでは「大企業相手の仕事が多く、やりがいを感じている」としたうえで、同社の「デュアル・トラック(道)」と呼ばれる制度について触れた。

これはエンジニアとして採用された人が、そのまま技術者としてキャリアアップする道と、マネジメント側の階段を上る道のどちらか一方を選べる制度のこと。この制度があるおかげで、糸井はセキュリティの専門家としての道を究められるのだという。

「最近ではデュアル・トラックを導入する会社は珍しくありませんが、制度として存在しても、実際には重要な決定はマネジメント側の人間が下しているということが少なくありません。ボックスは私が知っている中では、初めてデュアル・トラックにコミットしている会社。ボックスにきて本当によかったのは、技術者として難しい問題にチャレンジして、成長していけるということ。この会社はそれをやらせてくれます」

文=増谷 康 写真=ラミン・ラヒミアン

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