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フリーランスのライター・編集者

シリコンバレーにあるボックス本社オフィスの様子

シリコンバレーはテクノロジーだけでなく、「仕事のスタイル」もイノベーティブだ。世界の一流企業の「働き方」に変革を起こしてきたBox(ボックス)の本社オフィスを訪ねた。


オフィスにある卓球台やビリヤード、アーケードゲームなどは、従業員だけでなく、子供たちにも人気だという。

「子供はみんな会社が大好きです。小さい子もたくさん来ますよ」

フロアを足早に歩きながら、CPO(最高人材活用責任者)のクリスティ・レイクは得意げに語った。

「そうそう、昨日は赤ん坊がいましたね。いつもではないけれど、必要であれば、連れてきても問題はありません。『ありのままの自分で職場に来る』ことにもつながりますしね」

レイクは社訓をもちだして、子連れ出勤の権利をそう主張した。2児の母親である彼女も、重要な社内会議に幼い子らを連れて出席したことがあるという。

シリコンバレーのレッドウッドシティに拠点を構える大手IT企業の「ボックス(Box)」。法人向けにファイルの保存や共有、コラボレーションなど、「クラウド・コンテンツ・プラットフォーム」事業を展開する。事業内容こそやや地味だが、会社のカルチャーや働き方はとにかくユニークだ。いかに「変わった会社」であるかは、社訓を見ればわかるだろう。

そして業績も文句なしである。昨年度の売上高はグローバルで5億ドルを超え、右肩上がりの成長を続けている。顧客数は8万5000社を突破し、フォーチュン500社の実に69%にボックスが導入されているという。顧客には、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やゼネラル・エレクトリック(GE)、コカ・コーラ、アストラゼネカなど、誰もが知る大企業が名を連ねる。

そのボックスで、人事や企業カルチャー面での指揮を執るのがレイクだ。彼女は「壁に社訓を掲げても、社員に浸透するわけではない」としたうえで、社訓を形骸化させないために、いかに日頃からさまざまな取り組みをしているかを滔々(とうとう)と説いた。

「社訓はすべての社内プログラムに組み込まれています。たとえば人事考査では、何をやったかだけでなく、社訓に沿ってどう行動したかを尋ねます。また毎週金曜日の昼食ミーティングや、四半期ごとの全体集会などあらゆる公的な場では、社員のストーリーを共有する場があり、それを社訓に当てはめて考えられるようにしています。社訓は暗記するものではなく、実際の行動に照らし合わせて考えるものなのです」


ザ・ホーム・デポやHPなどのHR部門で上級管理職を務めてきたクリスティ・レイクは、人材戦略や企業カルチャー醸成のスペシャリストだ。2018年1月にボックスのCPOに就任

社訓が示す通りの会社だとすれば、ボックスはかなり尖った企業カルチャーを有していると言わざるをえない。とはいえ、多くの人気企業がひしめくシリコンバレーで、人材を採用するのは簡単ではないだろう。同社では、どのようにして優秀な人材を獲得しているのか。

レイクは「魔法の解決策はない」としつつ、1. 仕事の内容(有意義な挑戦ができ、自身の成長につながるか)、2. 職場環境(自分らしくいられる場所か)、3. カルチャー(建物に入ったときに感じる雰囲気が好きかどうか)、の3つの組み合わせが重要だと語った。

「われわれの採用戦略は、仕事内容で興味をもたせて、職場環境やカルチャーで応募者の心をつかむというもの。仕事が面白そうだから話を聞きにオフィスに来てみたら、『ワオ、この会社にはなにか特別なものがある』と思わせたいですね」

文=増谷 康 写真=ラミン・ラヒミアン

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