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時代に合わせて変化する、弔いのインターフェイス


現状ある弔いのシステムは「遺された人々の心のケアをする」という意味において、とても完成度が高くデザインされていて、だからこそ何百年と大きく形が変わることなく、今まで受け継がれてきたのだと思います。

一方で、その本質こそ変わらないものの、弔いの形式の選択肢は、これから確実に増えていくだろうなと感じています。

──形式の選択肢とは、具体的には?

たとえば、お墓ですね。今までの墓地の仕組みは、一族の誰かがずっと同じ土地に住み続ける前提の上に成り立つ、極めて土着的なモデルです。しかし、今はホームグラウンドとなる居住地を移動することが当たり前になって、そのモデルの維持が困難になっています。

また、これからは物理的な制約で、墓地を持つことが難しい時代にもなってくるのかなと。人が新しく生まれる限り、地球上における死者の数は増え続けていきますよね。でも、リアルな空間は有限で、墓地を広げていくのにも限界がある。なので、お墓の持ち方については、時代の変化に応じた形が、必然的に増えてくるでしょう。

──ここ数年でも、レンタル墓やデジタル墓といった、新しいお墓の形が生まれてきましたね。

お墓以外だと、最近では「遺骨をダイヤモンドに加工してアクセサリーにするサービス」も普及してきました。こうした加工品を位牌やお墓の代替と捉えていくような弔いの在り方も、今後出てくると思います。

──「死者との距離感をどのように保ちたいか」を考え、それによって弔いに用いるデバイスを選べるようになってくると。

選択肢が増えていくことは、生活者にとっては良いことだと感じます。加えて、そこにデジタル技術が実装されていくと、選択肢ごとに「その後の人々のメンタリティがどう変化するか」といったことも、トラッキングできるようになったりするのではないでしょうか。

──それが実現すると、「こういうタイプの人は、遺骨を指輪にして日々着けていると精神的に落ち着く」「こういう人はデジタル墓にすると故人との関係性が薄まりすぎてしまうから、やめておいたほうがいい」など、データから人それぞれの最適な弔いのデバイスを割り出していくことも、可能になりそうですね。

お墓や仏壇、位牌は言わば「生者が死者と向き合うためのインターフェイス」です。大事なのは「身近に故人と向き合う窓口が存在すること」であって、インターフェイスの形は時代の流れの中で如何様にでも変わっていくと思います。スマートフォンを仏壇に見立てて手を合わせるような文化も、今後生まれてくるかもしれません。

女子高生がスタバで死後を語る未来

──未来の弔いの選択肢として、ほかにどんなバリエーションがありそうですか。

そうですね……LINEスタンプは面白いなと。

──LINEスタンプ?

先日、とある「よさこい」の流派の方々から、亡くなられた流派の大家の先生の顔写真や忘れたくない名台詞を使ってLINEスタンプをつくり、今でも生徒さん同士でお互いに送り合っている……という話を聞いたんです。そこには先生への弔いの意志と共に、伝統的な流派が廃れないように後世に保存する意味合いもあるのだと思います。

人によっては不謹慎に感じられるかもしれませんが、「故人の象徴を人目につく形で残す」という営みは、昔から当たり前にあったわけで。数十年前なら、その手段が銅像や肖像画だったのが、LINEスタンプに移り変わったと考えれば、とても合理的な変化だとも捉えられます。

──「人目につく」という意味では、まさに現在に最適化されていますね。

こうした弔いの形式の多様化に伴って、生前に「自分が死んだらこういう形で弔ってほしい、弔われたい」と話す機会も増えてくるんじゃないかなと期待しています。

──期待、ですか?

日本には「生前から死について考えたり話したりするのはネガティブなことだ」という社会通念が、少なからずあるなと感じていて。でも、死は皆に訪れるもので、私たちの人生の大事な一要素です。だからこそ、もっと皆で死の在り方や迎え方について話し合えたほうが、人の人生はポジティブになっていくはずです。

私が取り組んでいるデジタルシャーマンプロジェクトも、「死のタブー感をなくしていきたい」という思いが、原動力のひとつになっています。3年くらい前に制作を始めた頃に比べると、今は弔いのサービスが産業としても注目されるようになってきたこともあり、だいぶ話しやすくなってきた体感があります。

──そうなると、2050年の社会ではもっと話しやすくなっていそうですね。

マックやスタバで女子高生が「つか、死んだらどう弔われたい?」みたいな会話をしているかも(笑)。でも、私はそんな風にオープンに語らえたほうが、遠ざけたり蓋をしてしまったりするより、健全だと思うんです。

構成=西山武志 写真=小田駿一

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