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I cover retail, from fashion to grocery, and its dance with technology

Trong Nguyen / Shutterstock.com

気候変動は、農作物の生産量が大幅に増えたり減ったりする原因だとされてきたが、酒好きの人にとって最悪のシナリオを招く可能性もある。世界で最も消費量の多いアルコール飲料であるビールがいつの日か、多くの人にとって手の届かない飲み物になるかもしれないことが、新しい研究で明らかになったのだ。

科学誌『Nature Plants』に2018年10月15日付けで発表されたこの研究は、カリフォルニア大学アーバイン校をはじめとする世界各地の研究者たちによるものだ。研究チームは、「厳しい干ばつおよび猛暑の時期」について調べることによって、気候変動がビールの主原料である大麦の生産量にどんな影響をもたらすのかを研究した。

論文には、「こうした極端な気象は、世界の大麦生産量に重大な影響を与えるかもしれない」と書かれている。また、異常気象の度合いによって、生産量は平均して3%から17%ほど減少する可能性があるという。

論文によると、大麦の世界的な供給が減れば、ビール製造用の大麦が「それに伴ってより大きく減る」おそれがある。それがひいては、「アルゼンチンなど一部の地域でビール消費量が激減する」事態につながるという。

研究者たちはまた、アイルランドなどの国々では、ビール価格が3倍近くに跳ね上がる可能性があると推測。厳しい干ばつが発生すれば、アイルランドではビール6本パックが20ドル以上も値上がりしかねないとしている。

気候変動による影響の研究はこれまで、麦や米、大豆といった主要作物を対象に行われてきた。また、ワインやコーヒーなどの「贅沢品」への影響も注目されている。とはいえ奇妙なことに、ワインなどと同様に「贅沢品」であり、所得水準の向上を背景に世界的需要が高まっているビールに対する気候変動の影響が「注意深く評価」されたことはこれまでなかったと、研究は指摘している。

大麦生産量が減った際にビールがより大きな打撃を受けるとされるのは、ひとつには、2011年の大麦の世界総生産量のうち、ビール製造に使われたのはわずか17%ほどだからだ。大麦は、主に家畜のえさになる。つまり、異常気象が発生した場合は、日常的に消費される食品のために大麦を使用するほうが、「ビールなどの贅沢品に使用するより優先される」わけだ。

論文によると、「将来的に干ばつや猛暑が発生すれば、主要国が入手できる大麦の総量が減るだけでなく、ビール製造に充てられる大麦の割合も減ることになる」という。

論文によると、オーストラリアや日本など、ビールがそもそも高額な国は、かならずしも「将来的に価格が最も高騰する国」にはならないという。

ビール価格は、「ビールのためにもっとお金を払おうとする消費者の経済力と意欲」と結びついている。つまり、「価格上昇が最大になるのは、比較的裕福で、昔からビールが愛飲されている国に集中する」ということだ。例えば、アイルランドのような国だ。

研究論文の共著者で、カリフォルニア大学アーバイン校で地球システム科学を研究するスティーブン・デービス准教授は声明で、「最も過酷な気象条件においては、干ばつならびに猛暑に襲われた年に、ビールの供給が約16%減少する可能性があることを、私たちの研究結果は示している」と述べた。

「この減少量は、アメリカのビール総消費量に匹敵する。今後の気候ならびに価格条件によっては、世界中の数億にのぼる人々にとって、ビールが手の届かないものとなるだろう」

翻訳=ガリレオ

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