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2018.11.02

名前を変えて旬を創る「ツイスト改名」


2.シミラールック(ペアルック)

日本でペアルックが流行したのは80年代。恋人同士がお揃いの服や色違いの服を着ていたものの、流行が終わると一気にダサいと言われるように。30年が経ち、友人・親子・恋人同士と、様々な間柄で同じコーディネートを楽しむファッショントレンドが再燃しています。

そしてここ数年ではインスタ流行もあり「双子コーデ」「リンクコーデ」という言葉が目に留まるようになりました。これって結局、同じことでは? と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ペアルック=同じ服をお揃いで着ること。リンクコーデ=グループ感、連帯感を感じさせるスタイリングのこと。リンクコーデは、ペアルックよりもスタイリングテクニックが重要です。

そして最近、韓国で流行しているのが「シミラールック(similar look)」と言われています。日本でもリンクコーデの次なるトレンドと言われていますが、色や材質など「どこかしら」統一されていますが同じ服を着るということではないので、各自に似合うスタイリングで個性を発揮することができます。とはいえ、同じ服を着てつながりを感じたいということや、仲間意識を目に見える形で表現したいという気持ちは、時代を超えても変わらないようです。

ペアルック→リンクコーデ→シミラールックという変遷を見ていると、徐々に連携と個性の両立が反映されてきたように思えます。時代の空気に合わせて、コンセプトの重心をずらしながら新しいネーミングを打ち出すこと。それにより、また旬な印象を与えることができるのです。


韓国では若い女性を中心に、グループ内での服装の統一感を持たせる「シミラールック」が流行中。

3.T字型人材(スペシャリスト+ジェネラリスト)

今年の春、新入社員と会話していて、よく聞く言葉が「T字型人材」でした。使い方は「私は、T字型人材を目指したいと思っています!」というように話されます。Tという文字の形から、深い専門性とその専門性に限定されない視野の広さをバランスよく持ち合わせていることを指しているのだろうと、すぐに察することができました。誰もが知っているアルファベット一文字で表現してしまうことで、若者にとって直感的に共感を生みやすく、言葉にしやすいのです。

この言葉が生まれた背景は、専門性を追求し、属人的な強みや業務を増やすだけではなく、その能力を、様々な局面に応用していくことや、チーム内でノウハウを共有していくことを期待していると言えましょう。

シミラールックはペアルックと同じように見えて、グループ感と個性の両立という現代の流れを汲んでいるし、T字型人材も専門性だけではなく広い視野も必要という現代のニーズに呼応すべく生まれた言葉だと思います。本質的な部分は変わらないものの、その重心を過去から現代のニーズに少しだけずらしながら、新しい名刺を持たせること。それにより旬なトレンドワード、トレンドそのものにつながるのでしょう。

英語のcoinという単語は、硬貨という意味だけではなく「新しい言葉を作る」という使い方もあります。新しいコンセプトをゼロから生み出すだけでなく、既存コンセプトに新しい言葉を投じることで、経済も動かせるかもしれません。


こいけあき◎電通Bチームメンバーとして、グローバルなファッショントレンドをウォッチ中。アパレル・ホテル・百貨店などのクライアントを担当。人・都市・文化との出会いが日々のモチベーション。

文=小池亜季 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN ストーリーを探せ!」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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