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ミツカン代表取締役兼CEO 吉永智征

半田運河沿いには、黒板囲いの蔵が整然と立ち並んでいた。江戸時代、ここで醸された酢や酒が、舟に積まれて江戸や大坂に運ばれた。知多半島中部の愛知県半田市は、醸造とともに歩む町だ。

「ミツカンは、この町とともに育ってきたんです」

ミツカン本社の12階から半田市街を一望すると、社長の吉永智征の言葉が実感できた。

同社の創業は1804年。214年もの歴史をもつ老舗のトップに、吉永が就任したのは昨年10月だ。

「10年後、高齢化がさらに加速度的に進み、社会構造は一変しているでしょう。そんななかで食品メーカーとして何ができるか。経営者として伝統を守るというよりは、組織を変革させていかなければ、と考えているんです」

今年2月期の決算で、ミツカンは過去最高売り上げ、最高益を達成。家庭用の食酢やポン酢、納豆などの売り上げも過去最高を記録した。昨年の夏の猛暑や、冬の寒さといった季節要因が酢や鍋つゆの売り上げを後押ししたのに加え、同社の扱う商品が近年の健康志向の高まりにマッチしていることも躍進の背景にある。さらに共働き世帯の増加に対応すべく、調理の手間を省く利便性の高い商品開発に注力してきたことも、消費者からの支持につながった。

好業績をけん引する吉永は1969年生まれの48歳。

「大学時代はバブル真っただ中でしたから、ノリは軽いかもしれませんね」と笑う。

吉永がミツカンに入社したのは「ミツカン酢」や「味ぽん」などナンバーワンシェアをもつメーカーだったからだ。基盤の強い組織なら、冒険ができると考えたと言う。しかし実際は「ムリヤリ冒険させられたようなもの」と苦笑いする。

吉永が入社した93年当時は、ミツカンが得意としてきた常温商品から、もずくやゼリーなどのチルド商品に参入した時期と重なる。そして吉永はチルド商品の営業担当となる。営業ルートもなく、チルド商品に詳しい上司もいない。吉永は1人で東海地区最大手のスーパーマーケットを担当することになる。通常は各メーカーの部長クラスが担当する案件だった。

「そこに右も左もわからない新人が送り込まれた。若いというだけでも相手にしてもらえないうえに、失敗の連続でしたから、なおさらでした」と振り返る。

「上司がいなかったので、新人時代から自分で意思決定をして、失敗したり成功したりを繰り返せた。確かに失敗は怖いけど、怖がって避けられるものではありません。何度も打席に立って、失敗も成功もたくさん経験したほうがいい」

文 = 山川 徹 写真 = 苅部太郎

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