ビジネス

2018.10.31

なぜ、そんなに自由なんですか? ZOZO「働き方の流儀」

田端信太郎(左)、西巻拓自(右)


西巻:僕自身も監査役と仲良くさせてもらってます。やっぱり経験値が違うんで、話しているだけで勉強になるんですよね。この間は飲みにも行きましたよ(笑)。ZOZOが大きな部活だとしたら、前澤はキャプテン、監査役は顧問ですよね。でもキャプテンがなかなかいうことを聞かないので、顧問もお手上げって感じで(笑)。

田端:そうそう(笑)。もう1つは、組織としての一体感ですよね。今はZOZOグループで1000名規模になりましたが、幕張と習志野の物流拠点ZOZOBASE、青山でそれぞれ300〜400名なので、高校のひと学年くらいの規模感です。だから、それぞれでギリギリまとまるサイズ感というか。もっと平たく言うと、仲がいいんです。良くも悪くも。

「社長が言ったから」は大企業病の始まり

──今回働き方についてお話を伺うにあたり、根底にある社内の文化や風土みたいなところは無視できないと思っています。なぜそういった一体感が醸成されたのか。

西巻:制度面としては「ろくじろう」以外にも、無用な社内競争をなくす「基本給・賞与一律」、スタッフ同士が部署を超えて交流する「FRIENDSHIP DAY」といった取り組みを導入しています。そういった社内制度が奏功している点は大いにあると思います。

あとは、よく前澤がひとつのことを一致団結して取り組むことの大切さを説いているんですね。半年に一度社員総会を実施していて、年末は忘年会を兼ねて開催しているんですが、数年前、全社員で合唱をすると言い始めたんです。前澤が指揮者で(笑)。

最初はみんな「だるい」や「めんどくさい」といった言葉を口にしていましたが、業務時間中にボイストレーナーをつけて社長室に電子オルガンを持ってきて練習すると、さっきまで文句ばかりだったスタッフが「久々に歌うと楽しいな」みたいなことを言い始める。

当日はお酒も入っているのでカラオケみたいなノリで大合唱。会場でZOZO社員の歌声が高らかに響き渡りました(笑)。そうやって、一体感をもって取り組む体験ができているという点は大きいと思いますね。

ただですね、僕は制度面や社員総会だけがこの風土をつくりあげたとは思えないんですよね。たとえば採用面では素直さや協調性、会社の理念への共感度などを重要視しています。あとは単純に各部門の古株たちが仲がいいので、彼らの背中を見ているスタッフたちは別部署とのコミュニケーションの距離感がわかるんですよね。「エンジニアのスタッフとはこういうコミュニケーションをするんだ」と。

管理職のコミュニケーション力の高さはひとつのポイントではないでしょうか。

──田端さんはこれまで在籍していた企業と比較してマネジメント面での違いは感じますか?

田端:まずひとりのマネージャーとしては、今まではたとえば査定だったり、共通経費の按分ルール決めだったりに結構時間を割かれていたんですよね。もちろんやるべきことなのは理解しているけど、つい「全体のπ(パイ)に関係なくない!?」と言いたくなる(笑)。

でも、ZOZOに入ってからはあまり巻き込まれるケースはなくなりましたね。大企業の管理職のなかにはうらやましく思う人がいるかもしれません。

スタッフの話をすると、自ら考える機会を提供するようにしています。今は広報部門を担当しているんですが、スタッフに経験者が少ないんですよ。経験値がないから今まではせっかくメディアから声をかけていただいても、自分で判断できず、社長の意見を仰いで伝えるだけの伝書鳩になってしまっていた。それじゃ仕事としてはつまらないじゃないですか。

だから「自分はどうしたい?」というコミュニケーションは意識的にとるようにしていますね。失敗しても良かれと思ってやったことなら僕がフォローするので、と。

前提として、「社長がそう言ったから」が判断基準になってしまったら、大企業病の始まりです。社長、とくに創業者は細かい部分に口出ししたくなる人が多く、、それ自体は悪いことじゃない。でも会社が大きくなるにつれて、社長がポロッと漏らしたひと言を周りが騒ぎ立ててしまう。それよりも「社長はそう言いますけど、僕はこう思います」と現場のスタッフから提案されるほうが嬉しいんですよね。

西巻:組織が大きくなると社長との距離が遠くなってしまうので、スタッフ一人ひとりが勝手な「社長像」をつくってしまうんです。

田端:現場発で成功したエピソードといえば、例の新聞広告ですね。前澤の事前確認ナシで「もっとやれ」を引き出せたのはよかったです。
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文=田中嘉人 写真=帆足宗洋

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