ネーミングが世界をつくる


1週間の予定を、手帳見開きの白味と黒味の空間配置で、大雑把に把握しているわたくしとしては、どうも居心地が悪い。

会社からは、社員全員にスマホが支給され、米国の最大手ソフトウェア開発会社によるシステムを利用して、会議の日程調整をしなさいとのお達しだ。何でも、社員の業務時間の中で、日程調整にかける時間の比率が存外に高かったのだそうだ。

システム導入によりその比率を下げようとしたらしいのだが、いつのまにか会議や打ち合わせだけに留まらず、ランチや会食、ゴルフの予定まで入ってきて、デジタル上の空白が次々に埋められていく。

そして、追い討ちをかけるように、近々オフィスの席が「フリーアドレス」になるらしいとの知らせ。所属社員分の座席は用意されないため、椅子取りゲームとなることは必至だ。それにともない、個人の予定も、例のシステムを通じてすべて公開されるとのこと。これは、あらかじめスケジュールの空白をきっちり埋めましょう、もしくは他人に埋めてもらいましょうということか。

スケジュール管理のためにスマホやPCの「奴隷」と化したビジネスマンたちの姿を見ると、複雑な思いに囚われるのだが、こうなったら、自らすすんで空白恐怖症に感染して、「架空の予定」で空白を埋め、「貴重でのどかな時間」を確保するしかないのかもしれない。

まさか、古代ローマ時代のセネカさんは、スマホやPCによるスケジュール管理など想像だにしなかっただろうが、現代人がデジタルの空白を埋め合い、そこにあるはずの自由な時間を失っていることを、どのように思うのだろうか。2000年後の世界にも「奴隷制度」は残っていたと安心するのだろうか。

連載 : ネーミングが世界をつくる
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文=田中宏和

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